短歌 宮里勝子選
江の川人麻呂渡しを訪ね来て標なぞれば相聞歌きこゆ 雲 南 熱田 保政
【評】河口から少し上流の川沿いに人麻呂渡し(江西駅)の標柱が立っている。そこにたたずむと、千三百年前の人麻呂が依羅娘子(よさみのおとめ)との別れを惜しんで詠んだ歌が聴こえてきた。愁いを含む感覚。
歯科医院に口開けながら目をつむる先生の顔八年知らず 米 子 倉井 正喜
【評】常にマスクを掛けた先生しか見ることはなく素顔はわからない。全幅の信頼によって成り立っている関係を口開けながらと詠み、当然の無防備さを...