記者会見する日本商工会議所の三村明夫会頭=16日午後、東京都千代田区
記者会見する日本商工会議所の三村明夫会頭=16日午後、東京都千代田区

 中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は16日、2021年度の地域別最低賃金の改定について、都道府県の時給を一律28円引き上げるよう求める目安を田村憲久厚労相に答申した。18人から成る審議会の経営側委員は答申決定の際、採決を求め、経営側4人が反対した。反対少数で答申は決まったが、採決となるのは異例。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は16日午後の定例記者会見で、新型コロナウイルス禍で業績が厳しい事業者への配慮を求めた経営側の意見が「全く反映されていない」と強調。有識者からなる公益委員と、経営側、労働側が議論し全員が同意するという本来の審議の在り方ではなく、引き上げを求める官邸が主導して決めるのは「大きな間違いだ」と批判した。

 今後、都道府県の審議会が本格化するが、同様に経営側の反発は必至で、目安通り引き上げられるかどうかは不透明だ。改定額は8月に出そろい、新たな最低賃金は10月ごろから適用される。目安通り引き上げられた場合、時給換算で現行の全国平均902円は930円となる。

 田村厚労相は16日午前の記者会見で「残念ながら意見が割れた」としながらも「(政府は)できるだけ早期に全国加重平均千円を目指しており、賃上げの流れは維持できたと思っている」と述べた。

 審議会の小委員会が14日に目安をまとめた。これまで鳥取など7県が最低額の792円だったが、全国で800円を上回ることになった。最高額の東京との差は依然として221円のままで、地域間格差の課題は残る。

 答申は目安額を経済情勢などに応じて都道府県をAからDの四つのランクに分類して提示し、いずれのランクも時給28円増とした。

 小委員会の議論では、労働側が大幅な待遇改善を要求。経営側は賃上げで経営が圧迫されるとして現状維持を主張した。