ハウス内の冠水によって腐ったミズナの状態を見る岸川勉さん=安来市赤江町
ハウス内の冠水によって腐ったミズナの状態を見る岸川勉さん=安来市赤江町

 7月に入ってからの記録的な大雨により、山陰両県で農地の冠水や土砂流入が相次ぎ、農作物や農業施設が大きな打撃を受けた。JAや自治体は被害状況の確認を急ぐものの、全容把握には時間がかかりそう。被災した農家は自然の猛威に立ち尽くし、営農再開の先行きに不安を募らせる。 (木幡晋介)

 水が引いたビニールハウス内の土にはコケが生え、葉が白くなったホウレンソウやミズナが散乱していた。安来市赤江町で葉物野菜を栽培する岸川勉さん(54)は「葉や根っこが腐っている。2回目の大雨でとどめを刺された」と肩を落とした。

 12日未明の猛烈な雨で、管理するハウス21棟(計56アール)のうち15棟が水没した。残るハウスも土が湿って生育に影響し、現時点で収穫ができるのは2棟のみとなった。有機栽培のグループ「赤江・オーガニックファーム」の仲間5人と合わせ100棟以上のハウスが同様に被害を受けたという。

 土が乾くまでは種がまけず、グループの代表を務める岸川さんは「お盆までは売り上げがなくなるかもしれない」と嘆く。

 JAしまねによると、出雲、斐川、安来、雲南地区など県東部を中心に浸水や土砂流入の被害が発生。斐川地区は大豆140ヘクタールが水に漬かり、出雲地区は水稲のほか、トマト、ネギ、ブドウ、メロンなど影響は広範囲に及ぶ。雲南地区では崖崩れによる道路の通行止めや断水の復旧作業に追われ、全貌が把握できていない。土砂流入や牛舎倒壊の報告があり、被害は拡大する見込みだ。

 鳥取県も打撃が広がっており、境港市麦垣町で白ネギ2ヘクタールを栽培する井上竜輔さん(37)は12日の激しい雨でほ場が浸水し、畝が崩れた。夏出荷の収穫最盛期で、倒伏により数百万円の被害が想定され、「川が氾濫するような災害に襲われたのは初めて。悔しいが、どうしようもない」と力なく語った。

 鳥取県が14日夕時点でまとめた農作物と農業用施設の被害額は9600万円。水稲や大豆、白ネギについては調査中で、さらに膨らむとみられる。