大相撲名古屋場所千秋楽、小手投げで照ノ富士を破り、雄たけびを上げる白鵬。7場所ぶり45度目の優勝を果たした=18日、名古屋市のドルフィンズアリーナ
大相撲名古屋場所千秋楽、小手投げで照ノ富士を破り、雄たけびを上げる白鵬。7場所ぶり45度目の優勝を果たした=18日、名古屋市のドルフィンズアリーナ
大相撲名古屋場所千秋楽、小手投げで照ノ富士を破り、雄たけびを上げる白鵬。7場所ぶり45度目の優勝を果たした=18日、名古屋市のドルフィンズアリーナ

 大相撲名古屋場所千秋楽(18日・ドルフィンズアリーナ)横綱白鵬が大関照ノ富士との全勝対決を小手投げで制し、7場所ぶり45度目の優勝を果たした。照ノ富士は3場所連続制覇を逃したものの、優勝に準ずる成績で横綱昇進が確実。

 白鵬の36歳4カ月での優勝は年6場所制となった1958年以降で2番目の年長記録。横綱としては最年長。

 大関正代は関脇高安を送り出し、勝ち越した。高安は7勝6敗2休。関脇御嶽海は小結若隆景に上手投げで敗れ、8勝止まり。若隆景は5勝10敗、同じ新小結の明生は勝ち越した。

 平幕で12勝の琴ノ若が敢闘賞、モンゴル出身で元横綱朝青龍のおい、豊昇龍が技能賞。ともに初三賞となった。十両は水戸龍が12勝3敗で初優勝。秋場所は9月12日に東京・両国国技館で初日を迎える。

 

狂気にも似た執念

 狂気にも似た執念が白鵬に乗り移った。36歳の第一人者は照ノ富士との千秋楽全勝決戦を荒々しく制し、復活を遂げた。「これでまた進める」。3月に手術した右膝に不安を抱え、進退の懸かった土俵を気迫で乗り切った実感がこもった。

 館内で家族やトレーナーら支援者が見守った。照ノ富士をにらみつけ、乱暴な肘打ちのような右かち上げから、右、左、さらに左と大振りの張り手。右四つで上手を引くも足が出ず、強引な左小手投げの連発で優勝を引き寄せた。

 右腕を振り下ろすガッツポーズに鬼の形相で雄たけびだ。土俵の美学と反する振る舞いだが、理想も品格もかなぐり捨てた。「右膝がぼろぼろで、言うことを聞かなかった。この一番に全てを懸けようと思った」と吐露した。

 15日間を全うできなければ、20年以上の力士人生に終止符を打つ覚悟だった。膝の調子が良く、多めに四股を踏めば足首が痛んだ。「本当に闘えるのか」と弱気だった。決死の思いで臨んだ今場所。右が軸足になる本来の左踏み込みを控えて、誰よりも豊富な経験と勝負勘で白星を重ねた。

 1年4カ月ぶりに賜杯を抱き、公言してきた東京五輪まで現役の目標も達成する。「重ね重ねの、いろんな思いがある。あと1勝で横綱900勝。次の1勝を目指していきたい」と引き締まった表情だ。横綱15年目に突入した夏。勝負師白鵬がよみがえった。