復刊した「思ひ出の記」を紹介する小泉凡館長=松江市役所
復刊した「思ひ出の記」を紹介する小泉凡館長=松江市役所

 松江ゆかりの文豪ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の妻・セツが記した追想記「思ひ出の記」の復刊が決まった。夫婦で過ごした13年8カ月を回想した一冊で、ハーンの名著「怪談」の出版120年の節目に合わせ、小泉八雲記念館(小泉凡館長、松江市奥谷町)が企画。来秋、セツをモデルにしたNHK連続テレビ小説の放送が控える中、愛情にあふれた生活を著した作品を読むことができるようになる。

 「思ひ出の記」はセツの口述をハーンの書生だった松江市出身の三成重敬が文章化。1914年に出版された伝記「小泉八雲」に初めて収録された。単体の著書として2003年に出版され、現在は絶版。「怪談」出版120年と同記念館開館90周年を記念し、同館がハーベスト出版(松江市)に復刊を持ちかけた。

 セツは日本の物語を収集し、ハーンに語ることで執筆活動を支えたとされる。「思ひ出の記」は、セツが物語を語る際、ハーンがセツ自身の考えを交えて話すよう頼んだ逸話などをセツの視点で紹介する。

 このほか、松江藩主の家老だった母方の祖父の人物像や、外国人にルーペをもらったエピソードを盛り込んだセツの手記2編も初収録した。

 19日に松江市の上定昭仁市長に完成を報告した小泉館長は「八雲と過ごした13年8カ月の苦労と幸せがにじんでいる。激動の時代を前向きに生きたセツを通じて元気をもらってほしい」と呼びかけた。

 B6変型判、132ページ。1760円。八雲の命日に当たる26日から同記念館で販売するほか、10月中旬からは両県の書店にも置く。

(佐々木一全)