「オーラ、ホーラ」。沖縄県・与那国島で畜産農家を営む小嶺博泉(53)が、餌の入ったバケツを手に呼びかけると、生い茂った草木の中から次々と牛たちが現れる。「それぞれに個性があって、互いに駆け引きもする。人間みたいなんだよね」。牛をなでながら、小嶺は静かに話す。その先には、自衛隊のレーダー塔がそびえ立っている。

 日本最西端に位置する与那国島は、対中国を念頭に九州・沖縄の防衛力を強化する「南西シフト」によって自衛隊の駐屯地が置かれ、増強が...