今回の芥川賞は石沢麻依「貝に続く場所にて」(講談社)と李琴峰「彼岸花が咲く島」(文芸春秋)の2作に決まった。前者は震災をモチーフに、比喩やイメージでしか捉えられない記憶の不確かさと静かに向き合っていく。後者は一見、理想郷に見える島を舞台に、社会システムを所与のものとするこの国の風潮を敢然とうがつ。両者に通底するキーワードをあえて挙げるなら「考え続ける...