国内工芸界で最大規模の公募展「第71回日本伝統工芸展」(島根県、県立美術館、山陰中央新報社など主催)が11日、松江市袖師町の島根県立美術館で開幕した。陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工、人形、諸工芸の7部門の入選作から山陰の地元作家16人(島根9人、鳥取7人)を含む270点が並び、詰めかけたファンが挑戦的な表現技法が光る力作を熱心に鑑賞している。25日まで。
重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されている白磁作家の前田昭博さん(70)=鳥取市河原町=は20年ぶりに鉢の創作に挑み、「白瓷面取鉢(はくじめんとりばち)」を仕上げた。「大ぶりな作品ほど技術的に難しいが、新しい白磁の表現に取り組めて新鮮だ」と語った。
染織で初入選した伊藤浩二さん(53)=安来市月坂町=の「わたつみのうた」は、数十年前に隠岐行きのフェリーから目にした光景を広瀬絣(がすり)に落とし込んだ。伊藤さんは「イメージ通りの表現ができた」と満足感をにじませた。
人形で同じく初入選の松本輪加子さん(69)=松江市国屋町=は、ネパールで農業にいそしむ女性の表情を緻密に表現した「平穏」を出品。「背中に担ぐトウモロコシの質感にこだわった」と解説した。
鑑賞した益田市戸田町の主婦宮内梢さん(77)は「毎年楽しみに訪れている。素晴らしい作品を見ると元気をもらえる」と目を凝らした。
全国11カ所を巡回し、山陰両県では松江が唯一となる。オープニングセレモニーで藤間寛館長は「時代の変化とともに色彩が鮮やかになり、絵画的な装飾も施されている」と見どころを紹介した。
会期中は無休。開館時間は午前10時から午後6時半まで。期間中は作家による講演会やギャラリートークもある。(白築昂)