今月17日から島根県立美術館(びじゅつかん)(松江(まつえ)市袖師(そでし)町)で、日本画家・平山郁夫(ひらやまいくお)さん(1930~2009年)の絵画作品と、平山さんが収集(しゅうしゅう)したシルクロードコレクションを紹介(しょうかい)する展覧会(てんらんかい)を開催(かいさい)します。原爆投下(げんばくとうか)から80年となる今年、シルクロードによって結ばれた広大な地域(ちいき)における人類のはるかな歴史(れきし)に触(ふ)れ、改めて「平和への道」について考えてみませんか。
文化を伝えた道
みなさんは「シルクロード(絹(きぬ)の道)」という言葉を聞いたことがありますか。西はローマ(イタリア)から東は西安(せいあん)(中国)、さらには奈良(日本)まで続く古代の交易路(こうえきろ)で、中国の絹織物(きぬおりもの)が西方へ運ばれたことからこのように呼(よ)ばれています。人々は、砂漠(さばく)や空気の薄(うす)い高地を通る長く過酷(かこく)な道を行き交い、物品ばかりでなく宗教(しゅうきょう)や文化などを伝え合いました。
この文明の道を、生涯(しょうがい)に140回以上も訪(おとず)れて取材し、また創作(そうさく)や研究のためシルクロード文化の産物を収集(しゅうしゅう)するとともに、世界の文化財保護(ぶんかざいほご)にも力を注いだのが、平山郁夫さんです。
15歳、広島で被爆
平山さんは、広島に原子爆弾(げんしばくだん)が投下された1945年8月6日、爆心地から約4キロの場所にいました。15歳(さい)でした。被爆(ひばく)の後遺症(こういしょう)に苦しみながら東京芸術(げいじゅつ)大で絵を学び、「平和を祈(いの)る作品を一枚(まい)でも描(か)きたい」と心に強く願います。
そうした中、困難(こんなん)な旅を乗り越(こ)えインドから経典(きょうてん)を持ち帰った中国の僧侶(そうりょ)・玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)(602~664年)に、大きな感銘(かんめい)を受けて作品を描き、自らもその足跡(そくせき)をたどろうとシルクロードへと向かいました。
仏教や日本文化の源流(げんりゅう)を求めてシルクロードを取材する中で、平山さんは後年次のように語っています。
「シルクロードの文化遺跡(いせき)のほとんどは、戦に敗れたもののモニュメントともいえます。こうした遺跡が語りかけてくるものは、戦争のおろかさです。文化遺産(いさん)を守ることは、平和への道にも通じます。」(「シルクロードの旅ジュニア版ブックレット」(2009年、平山郁夫シルクロード美術館)より引用)
(上野小麻里(うえのさおり)・島根県立美術館専門(せんもん)学芸員)
◇次号にも掲載(けいさい)します。
開催概要
【展覧会名】「平山郁夫 未来へのキャラバン -シルクロードから日本、そして出雲(いずも)へ-」
【会期】1月17日~3月10日火曜日休館(ただし2月11日は開館)
【時間】(1、2月)午前10時~午後6時半
(3月)午前10時~日没後(にちぼつご)30分 ※展示室入場は閉館の30分前まで
【会期中企画(きかく)】「クイズキャラバン シルクロード謎解(なぞと)きの旅」 ※要企画展観覧料(かんらんりょう)
ロビーや企画展示室にあるクイズを解いて、オリジナルグッズをもらおう。(グッズがなくなり次第終了(しゅうりょう))