竹下亘衆院議員(右)に要望する丸山達也知事=東京・永田町、衆院第2議員会館(代表撮影)
竹下亘衆院議員(右)に要望する丸山達也知事=東京・永田町、衆院第2議員会館(代表撮影)
竹下亘衆院議員(右)に要望する丸山達也知事=東京・永田町、衆院第2議員会館(代表撮影)

 東京五輪の聖火リレーの中止検討を打ち出した島根県の丸山達也知事が25日、政府に対して行った要請は消化不良に終わった。地元選出の自民党国会議員は、感染拡大地域と同じように打撃を受ける地方の飲食店支援に理解を示す一方、聖火リレーを引き合いにした手法に距離を置いた。地方からの訴えは、国を動かす一撃となるのか。要請の舞台となった霞が関、永田町での一日を追った。                 (取材班)=1面参照 「島根からあれこれ言われる筋合いはないという批判もある。だが黙っているわけにはいかない」

 午前11時半。厚生労働省で山本博司副大臣への要請を終えた丸山知事が記者団に答えた。

 携えたのは、東京都の感染拡大対策の充実と国による経済支援を求める要請書。東京五輪や聖火リレーの反対が主眼ではなく、環境を整えた上で実施すべきとの主張だった。

 ただ、国の対応は冷ややかだった。

 山本副大臣は理解する立場を見せたが、経済産業省、内閣府で応対したのは政務三役ではなく、事務方の課長と企画官。県のトップが向き合う相手としては見劣りした。

 知事が面会を望んだ西村康稔経済再生担当相は午後0時35分、内閣府から国会に向かう車に乗り込んだ。記者の問い掛けには口を真一文字に結んだままだった。

 

 午後1時半、衆院第2議員会館9階の一室に知事が入った。部屋の主は自民党の竹下亘衆院議員(島根2区)。聖火リレーの中止を検討すると表明した知事を「注意したい」と述べた相手。分刻みの要請スケジュールが組まれる中、2人は予定時間を10分オーバーして40分間話し込んだ。

 「(聖火リレーは)知事が決めることではないだろう。組織委なり、国民なり、世界で決めることだ」

 竹下氏は面会後、記者団に対し、新型コロナへの対応と聖火リレーの実施を結び付けた問題提起への違和感を再び口にした。

 ただ、苦境にあえぐ飲食店への支援金の必要性には理解を示し、「島根県一つじゃ力が弱い。徒党を組んで声を上げてほしい」と、他県と連帯するよう進言した。

 営業時間の短縮要請に応じた飲食店に支払われる協力金の財源が、感染拡大地域に2兆円が確保されている一方、感染者数が抑えられている島根などには交付されない。そう訴える知事の主張に細田博之衆院議員(島根1区)は「格差が大きすぎる。ちゃんと政府に言う」と約束した。

 

 午後5時、東京都庁。都議会の一般質問に立った小池百合子知事は「サステナブル・リカバリー(持続可能な回復)を目指すオリンピック・パラリンピックの新たなモデルとして成功させる」と、独特の言い回しで五輪開催の意義を訴えた。丸山知事が「開催する資格がない」とまで断じた感染拡大対策について、論じることはなかった。

 感染拡大防止と経済支援。知事がリレー開催の条件として掲げた要請は政府に煙たがられ、前進はなかったものの、国会議員との交渉の扉は開けた。

 午後8時前、都道府県会館で開いた記者会見の終了間際、元総務官僚の知事は「自分は霞が関にもいた。今回のやり方が常識から外れていることは重々分かっている」と話し、聖火リレーを引き合いに飲食店支援を求める手法に異論があることを認めながらも、再度強調した。

 「協力をもらって改善が進むよう、自分のできることをやるだけだ」