短歌 安部歌子選

ゴミ置き場へ敢えて泥濘飛びこえて検診の日の不安蹴散らす    出 雲 船田美津子

  【評】初句“ゴミ置き場へ”に朝を連想させる工夫がある。泥濘(ぬかるみ)を飛びこえて蹴散らそうとした不安であるがそれも一瞬。再び不安は襲ってくる。“検診の日の”は八音になっても“検診の朝の”としたい。

見上げれば深い青空広ごりぬラッセルの先に見ゆる山頂      松 江 新井 千慧

  【評】雪をかきわけながらの登山であろう。雪を被った山頂は深い青空の中。情景の みを詠いながら作者の熱い思...