パイロットプラントを背にテープカットする磯野裕之代表取締役社長(左から3人目)ら=米子市吉岡、王子製紙米子工場
パイロットプラントを背にテープカットする磯野裕之代表取締役社長(左から3人目)ら=米子市吉岡、王子製紙米子工場

 製紙大手・王子ホールディングス(HD、東京都)が、傘下の王子製紙米子工場(米子市吉岡)で建設していたパイロットプラントが完成した。紙の原料「パルプ」の製造ラインを活用し木質由来のバイオエタノールと糖液を造る。石油資源に頼らない持続可能な航空燃料(SAF)などに使われる新素材の製造工程を実証。国内最大規模となる量産化と、紙以外の事業構造への転換につなげる。

 木質由来のエタノールと糖液の実証設備としては国内最大級で、紙の需要縮小、世界的な脱炭素化の流れを背景に、王子HDが約43億円を投じた。酵素を使ったパルプの糖化と、酵素の分離回収を行う独自技術により、プラスチック、ゴム、繊維などの石油代替原料となる糖液、SAFや基礎化学品で使われる木質由来エタノールを生産する。

 生産能力(年間)は、木材チップ約6千トン、木材パルプ約3千トンを使い、エタノールは1千キロリットル、糖液は3千トン(乾燥重量)。連続操業時の製造コスト、品質などを検証し、事業化レベルまで高める。

 国内最大規模のエタノール10万キロリットル、糖液20万トン(同)を生産する大型プラントを別に整備し、2030年をめどに本生産に入る。

 21日に現地で完成式があり、王子HDの磯野裕之代表取締役社長が「ポートフォリオ(事業構成)の転換の第一歩だ」と強調。平井伸治鳥取県知事、CMキャラクターのトラウデン直美さんらと共にテープカットして祝った。

 磯野社長は「大型プラントをどこにどう造っていくかは、さらに検討を進めたい」と説明。「35年ごろには製紙業のほか、木質バイオマスビジネスが半分ぐらいを占めているのではないかと思う」とした。

(吉川真人)