消費支出の増減率推移
消費支出の増減率推移

 新型コロナウイルス禍で景気が低迷する中、消費の回復に地域間で差が出ていることが14日、総務省の家計調査で分かった。大都市や中規模の都市が持ち直しの基調にあるのに対し、人口の少ない小都市や町村では回復が鈍く、苦境に陥っている。専門家は地域経済の柱である観光産業への打撃による収入減や、コロナ慣れで都市部の外出自粛が緩んでいることが背景にあるとみている。

 総務省の家計調査では、2人以上世帯の消費支出について東京23区と政令指定都市を「大都市」、それらを除く人口15万人以上の市を「中都市」、人口5万人以上15万人未満の市を「小都市A」、人口5万人未満の市と町村を「小都市B・町村」としている。

 1カ月当たりの名目消費支出を見ると、2020年4月以降いずれの区分も前年同月を下回る月が多く、新型コロナ禍が消費に影響を与えている様子がうかがえる。20年5月は大都市と中都市は約17%、小都市Aは約18%、小都市B・町村は約9%それぞれ減少した。

 ただ、これらの地域間で消費の回復具合には大きな差が生じている。大都市の消費支出は20年10月以降回復基調に転じ、21年1月と2月のほか、6月を除いて前年同月を上回った。中都市にも同様の傾向が見られる。

 一方、人口が少ない地域の状況は厳しく、小都市Aや小都市B・町村は20年7月から21年2月までマイナスが続いた。21年4月は大都市が約15%増となったのに対し、小都市B・町村は約5%減だった。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「コロナ慣れが広がる都市と警戒心が根強い地域では意識に差があり、消費行動に影響している」と分析。業績が堅調な大企業製造業の本社が集中する都市部に比べ、経営が苦しい中小企業や訪日外国人観光客の需要を失った観光産業で働く人が多いことも一因ではないかとみている。