調べたダイオウイカの精子塊の画像を示す広橋教貴教授〓(?)松江市西川津町、島根大
調べたダイオウイカの精子塊の画像を示す広橋教貴教授〓(?)松江市西川津町、島根大
精子塊が付着していたダイオウイカ(宮津エネルギー研究所水族館提供)
精子塊が付着していたダイオウイカ(宮津エネルギー研究所水族館提供)
調べたダイオウイカの精子塊の画像を示す広橋教貴教授〓(?)松江市西川津町、島根大 精子塊が付着していたダイオウイカ(宮津エネルギー研究所水族館提供)

 軟体動物なのに、身持ちは堅い!?ー。深海にすむダイオウイカは、雌が同一の雄の精子だけ受ける「単婚」だとの新たな説が示された。島根大生物資源科学部の広橋教貴教授らの研究グループが漂着した雌に付着していた精子塊を解析した。複数の雄から受精する「乱婚」だとする定説に一石を投じており、謎の多い生態を解き明かす上で貴重な研究成果になりそうだ。

 

 ダイオウイカは世界最大級の無脊椎動物として知られ、国内では胴長約1・8メートル、全長約6・5メートルの個体が見つかった記録がある。太平洋側に生息するとされ、日本海側では冬の対馬暖流に乗って山陰両県に漂着することがまれにある。

 他のイカやタコと同じく雌が雄から精子の入ったカプセル(精夾(せいきょう))を受け、中のひも状の精子塊が雌の体表に付着して受精すると考えられている。

 研究グループは2020年2月、京都府伊根町で漁師の網にかかった胴長約1・5メートルの雌の死骸を入手。表面に精子塊が付着した珍しい状態だったため「マイクロサテライトマーカー」と呼ばれる個体識別の手法を用いて父性解析したところ、いずれも同一の雄の精子だった。研究成果はオンライン上で発表した。

 乱婚の1体目の精子塊だった可能性が否定できず、単婚と断定するにはさらに複数個体の解析が必要になる。それでも今回の研究が光るのは、漂着個体でさえ年に数えるほどしかない中、貴重な精子塊を解析した点だ。深海艇を用いた観察や漂着個体の解剖にとどまっていた生態研究に遺伝子解析という手法を加えた点でも画期的だ。

 定説は、広大な深海では雄と雌が出会いにくいため雄が子孫を残しやすく、雌は多様な遺伝子を獲得できる乱婚が有利との推測に基づく。他のイカやタコの大半が乱婚であることも根拠となっている。

 広橋教授は「解析技術の進化により、今まで推測でしかなかった点を断定的に言えるのは大きい。今回の結果を通じて寿命や繁殖様式など、謎に満ちた生態を解き明かしたい」と話す。

       (中島諒)