国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)は22日までに、新型コロナウイルスワクチンをがん患者に接種してどのくらい効果が得られているかの検証を始めた。同病院で診療を受ける患者約1200人を対象に最長で1年間、感染を防ぐ抗体の量などを測り、がんの種類や受けている治療によって違いが生じるかどうかを調べる。がん患者のワクチン効果を調べる研究は国内では初めて。
研究を担当する同病院先端医療科の勝屋友幾医員は「調べた結果は参加者に伝える。十分な抗体ができていると分かれば安心できるし、リスクが高めだと分かれば対応を考える重要な情報になる」と話す。
数十人の患者を対象にした英国の研究では、ファイザー製のワクチンを2回接種した後に十分な抗体ができていたのは、大腸がんや肺がんなど固形がんの患者では95%だったが、白血病やリンパ腫といった血液がんの患者では60%だった。参加者が少なくさらなる検証が必要だが、免疫に関わるリンパ球を減らす抗がん剤治療が影響している可能性がある。
新たな研究では、固形がんの患者500~千人、血液がんの患者100~200人に協力してもらう。ワクチン接種前、2回目接種の1カ月後、半年後、1年後を目安に抗体の量などを調べる。比較対象として、同病院の医療従事者約200人も参加する。接種するワクチンは主にファイザー製になる。
接種した部位の腫れや発熱のような副反応の程度も患者と医療従事者で差はないかどうか調べる。接種から1カ月後のデータが集まったら年内に中間結果を発表する予定。
▼がん患者のワクチン接種 国内で使用されている新型コロナウイルスワクチンはがん患者にも接種可能。厚生労働省は、がん患者を基礎疾患のある人として優先接種対象に含めている。国立がん研究センターによると、基本的には接種できるタイミングでワクチンを打って問題ない。ただ、病状が進行して全身の状態が悪かったり、発熱が続いていたりしたら「無理に打つ必要はない」としており、主治医に相談するよう呼び掛けている。