短歌 寺井淳選

ほしかった海の歌集を買いにゆく今日でなくなる馴染みの書店   益 田 〓(木ヘンに漆のツクリ)松 友香

 【評】グローバリズムが田舎の町にも浸透する、そんな世相を決して声高にならず描いています。この歌集にはきっと、誰にも侵されない海が広がっているでしょう。

コロナ禍に生まれし孫は五歳なりはにかみてケーキの火をフッと消す

                               出 雲 高橋 孝子

 【評】コロナ禍のさまざまの自粛と違って、この子のはにかみは生気そのもの。あの時の不安を吹き消すように誕生日のケーキを囲...