全国的な新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言に8道県が追加されることになった。対象地域では外出を控える人が増え、地域経済を支える観光や飲食業への打撃は一段と深まりそうだ。日本全体の景気回復はますます見通せなくなった。

 「ここ1年、団体予約が入っても、キャンセルされる状況が続く。いつになったら観光できる状況になるのか先が見えず厳しい。仕事する意欲もなくなってしまう」。世界遺産・厳島神社がある広島県廿日市市の宮島で飲食店を営む60代の男性が窮状を訴えた。広島県は緊急事態宣言に追加される8道県の一つだ。

 北海道の知床半島で民宿を経営する男性(54)は「知床全体が閑散としていて観光シーズンの8月とは思えない。東京で1日の新たな感染者が5千人を超えた8月上旬ごろから本州からのキャンセルが相次ぐようになった」と肩を落とした。

 日本経済の規模を示す国内総生産(GDP)を物価変動の影響を除いた実質で見ると、感染拡大前の2019年10~12月期は年率換算で546兆円だった。感染が広がった20年4~6月期に500兆円まで落ち込み、最新データの21年4~6月期は538兆円だった。

 政府は、ワクチン接種を済ませた人が多くなれば、個人消費が持ち直し、海外の景気回復を追い風に企業も設備投資を増やすとみて、GDPは21年中に感染拡大前の水準に戻ると推測している。

 しかし、民間エコノミストは政府の予測を楽観的過ぎるとみる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は感染拡大前の水準に回復するのは22年1~3月期と想定。「GDPの半分強を占める個人消費が年内に感染拡大前の水準に戻るのはほぼ無理だ」と指摘する。