なるほど、そんな人もいるかもしれない。先日、審査員を務めた島根県高校弁論大会。益田高2年の長藤伊織さんは、スマートフォンやタブレットが普及した現代社会は「横書き」の仕様が主流であり、日常で「縦書き」の日本語に触れない人も多いのではないか、と投げかけた。
新聞や書籍では今も多用され、若い人には堅苦しいイメージがあるかもしれない縦書きについて「背筋がすっと伸びるような、ゆっくりと言葉が染みこんでくるような魅力がひそやかに存在すると思う」と語った。
演題は「消え残る言葉」。彼の中では、読んだり聞いたりした言葉の多くが流れるように消える中、強い意味や魅力を持った言葉は縦書きの文字になって心に保存されるという。そして人が人を思って紡ぎ出す言葉にこそ心を揺さぶる魅力があると、教師からかけられた言葉の実例を示し“証明”してみせた。
時事問題や人権をテーマにすることが多い弁論大会にあって、必ずしも審査受けはしないであろう「縦書きの味わい」を熱く語ったその感性に引かれ、終了後に声をかけ、思いを聞いた。
大量のデータから導き出されるAI(人工知能)の横書きの文字を便利に消費することが多い今、言葉一つ一つとの出会いを喜ぶ、みずみずしい感性はまぶしかった。長藤さんだけではない。言葉の力を信じて登壇した生徒たちに、審査を忘れ、ありがとうの拍手を送った。(衣)













