石破茂首相の退陣表明を報じるテレビニュース=松江市朝日町、松江テルサ
石破茂首相の退陣表明を報じるテレビニュース=松江市朝日町、松江テルサ

 山陰両県で有権者の反応は分かれた。石破氏の地元・鳥取県からは、少数与党下でも粘り強く政策を推し進めようとしたとして辞任を残念がる声が聞かれたほか、自民党内の問題をなすりつけられ「責任はない」と擁護する人も。島根県内からは、党内基盤の弱さから「正論」と裏腹の言動が目立ち、目に見える政策がなかったことを指摘する声が上がった。

 「今のタイミングとは…」。JR米子駅前で配布された号外で辞任を知った米子市目久美町の無職鹿島洋子さん(72)は目を丸くした。これまでの言動から「確固とした意志を持って続け、粘ると思っていた。残念だ」と話した。

 石破氏の地元、鳥取市では同情する声が多く聞かれた。市内の大型店で一報を耳にした坂根勝俊さん(75)=鳥取市内在住=は「貧乏くじを引いた」と振り返り、参院選後に急拡大した「石破おろし」の動きを引き合いに「参院選は石破さんでなくても負けていた」と強調した。鳥取市内の60代男性は「政治とカネ」の問題が主要因だったとし「石破さんに責任はない」とかばった。

 一方、島根県内からは冷ややかな意見も。松江市古曽志町の高校生青戸彦佑さん(18)は「何が良くなったのか分からない」と切り捨てた。首相の態度やマナーが交流サイト(SNS)で批判される様子を目にしていたといい「あまり良い印象はない」とした。

 言動の”変節”が、党内や国民からの求心力を落としたとする指摘もあった。出雲市矢尾町の自営業山枡詩乃さん(41)「総裁就任前と後で発言に変化があったように見える。自分の思いを貫き通してほしかった」と述べた。

 退任会見で「残念ながら道半ば」と評した地方創生や各種施策の行方を案じる有権者も少なくない。雲南市加茂町で農業を営む嘉本文夫さん(77)は地方の実情を知る石破氏に期待していたとし「実現を見届けたかった」と悔やんだ。島根県川本町川下の農業城納清隆さん(69)は「次の総裁は理解を示してくれるのか。中山間地域の農地がなくなれば食料危機がくる」とこぼした。

 辞任を巡っては、自民党内で首相への批判が公然と上がり、所属国会議員や地方議員も「コップの中の争い」と揶揄(やゆ)した。安来市西赤江町の介護職飯塚裕美子さん(69)は「足を引っ張り合うのではなく、時代が変わったという認識を持ち、若い人が引っ張ってほしい」と望んだ。

(取材班)