コロナ休校中の緊急調査結果
コロナ休校中の緊急調査結果
日本体育大の野井真吾教授
日本体育大の野井真吾教授
コロナ休校中の緊急調査結果
日本体育大の野井真吾教授

 長引く新型コロナウイルス禍は学校行事の中止や給食の黙食など、子どもの学びの場に大きな影響を及ぼしている。子どもの体と心を研究する日本体育大の野井真吾教授(学校保健学)は「大人は、遅れた学習を取り戻すことだけに注力せず、これまでにない生活の変化を強いられている子どもの声に寄り添うことが重要だ」と指摘する。

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 新型コロナの感染拡大で小中学校の休校措置が長期化した昨年、臨時休校が子どもに及ぼした影響を、休校中(参加親子2423組)と休校明け(同1341組)の2度に分けて緊急調査した。

 肥満傾向の増加や視力低下など懸念すべき結果が明らかになったが、期せずして学校の存在意義を子どもたちに教わる機会にもなった。

 休校中の困り事を子どもに尋ねた質問への回答(複数回答)で、最多は「(思うように)外に出られない」が61・0%。「友達に会えない」(56・5%)、「運動不足になってしまう」(56・1%)と続いた。「勉強を教えてもらえない」は39・0%だった。

 一方、保護者の休校中の心配事(複数回答)は「運動不足になってしまう」が82・7%、「勉強を教えてもらえない」が73・7%、「(思うように)外に出られない」が71・9%。親は毎朝、玄関を出て行く子に「今日も勉強を頑張って」と願うが、子どもは友達に会いに行っているわけだ。

 ポストコロナ時代の学びの方向性として、オンライン授業など情報通信技術(ICT)を活用した教育が推進されているが、子どもにとっては学校という「場」に意味があると気付かされた。

 コロナ禍は3密(密閉、密集、密接)回避が求められるが、子どもはそもそも群れて育つもの。政府は仮想空間と現実空間を高度に融合させた未来社会「ソサエティー5・0」を見据え、1人1台の学習用端末と通信ネットワークを整備する「GIGAスクール構想」実現に懸命だが、子ども自身が何を望んでいるかに着目する必要がある。

 緊急調査では「学校があれば楽しく勉強できるのに、1人ではやる気が出ない」(小5男児)、「1人で勉強したら自分の意見と正解しか分からない。たとえ会えなくても友達の意見を聞きたい」(小6男児)との自由記述も見られた。対面での学びは子どものやる気さえ喚起していたのだ。

 人間は元来、家族や仲間と協力しながら進化してきた。動くことや群れることの自粛を要請される窮屈なコロナ禍の生活は、子どもにとって大人が想像できないほどの試練といえる。身体的な〝密〟は回避しつつも、運動会や卒業式といった行事の在り方を一緒に考えるなど、精神的な〝密〟を学校や社会がどのようにつくり出していくかが問われている。

 =随時掲載=

 

 のい・しんご 日本体育大体育学部健康学科教授。教育生理学や発育発達学などを専門とし、現代社会で変化する子どもの体と心の実情を研究する。著書に「からだの〝おかしさ〟を科学する すこやかな子どもへ6つの提案」など。