早々に浴衣を片付け、定番商品の帯留め、帯締めが並ぶ売り場=松江市竪町、えんや呉服店
早々に浴衣を片付け、定番商品の帯留め、帯締めが並ぶ売り場=松江市竪町、えんや呉服店

 山陰両県はこの夏、記録的大雨に合間の猛暑と天候に振り回された。新型コロナウイルス感染拡大や東京五輪という特殊要素も加わり、異例ずくめだった夏を消費の現場から振り返る。 (取材班)

 7月上旬、活発な梅雨前線による大雨が山陰を襲った。ようやく収まったかと思うと、すぐに梅雨明け。下旬から8月上旬までは暑い日が続き、その後、再び大雨に見舞われた。

 ホームセンターのジュンテンドー浜田店(浜田市高田町)の森田泰夫店長(50)は「例年にないほど天候が安定せず在庫管理が難しかった」とこぼす。

 猛暑と新型コロナ禍でのアウトドア人気を受け、7月は直径1・5メートルの家庭用プールの売り上げが前年の3倍を超えた。品切れも出て追加発注したが、8月に入るとぱたりと止まり、在庫を抱えることに。花火やバーベキュー用品も同様の傾向で「盆期間に高まる需要が大雨でしぼんだ。帰省客の減少も重なった」という。園芸用品も天候にたたられ、肥料や除草剤が落ち込んだ。

 夏の風物詩・ビアガーデンは暑さによる盛り上がりは一時的で、お寒い状況となった。例年より2カ月早い4月上旬にオープンした松江ニューアーバンホテル(松江市西茶町)。梅雨明け後に客足は伸びたものの、ここまでの売り上げは前年の6~7割の水準にとどまる。

 移り変わりの激しい天候に加え、新型コロナの感染拡大も各方面に影響を与えた。鳥取県は8月3日、島根県は同18日に感染状況が「ステージ3」(感染急増)相当に入ったと発表。「WeLove山陰キャンペーン」は停止に追い込まれた。

 皆生グランドホテル(米子市皆生温泉4丁目)は、書き入れ時の盆期間は4千人分の宿泊キャンセルが発生した。伊坂明社長(50)は「旅館側がどんなに感染予防を徹底しても『旅行自体が駄目』という雰囲気がある」と肩を落とす。

 旅行を諦めて、地元で出掛けようにも夏祭りの中止・縮小が今年も相次いだ。

 えんや呉服店(松江市竪町)の浴衣の売り上げは前年とほぼ変わらず、19年比で7~8割減。通常は5月の大型連休から8月末まで店頭に並べるが、今年は不振のため盆明け早々に片付けた。塩冶栄さん(36)は「気軽に楽しめる浴衣は和服の入門に良い商品。祭りがなくなり、和服の良さを伝える機会が減ってさみしい」と嘆いた。