この秋、加工食品の値上げが相次ぐ。天候不順が響き、原料価格が高騰。パスタやマーガリン、菓子、冷凍食品など幅広い品目に値上げが広がり、小売業界は消費減速を警戒する。
ニップンと日清フーズは9月1日納品分から家庭用のパスタ、そばの価格を引き上げた。デュラム小麦などの国際相場上昇が要因だ。
9~10月はUCC上島珈琲などの家庭用レギュラーコーヒーの店頭価格が2割程度高くなる見通しだ。ブラジルで昨年後半の雨不足に続き、今年7月に霜の被害が出て生豆相場が急騰。キーコーヒーの広報は「新型コロナウイルス禍で海上輸送網も混乱した」と語る。
コーンや菜種、パーム油の相場上昇も影響する。明治のマーガリンは約13年ぶりの価格引き上げで「明治コーンソフト」は約1割高くなる。山崎製パンとフジパンは洋菓子と和菓子を値上げ。11月は日清オイリオグループやJ―オイルミルズが食用油、ニチレイフーズが揚げ物など冷凍食品の価格を上げる。
原料高は現時点で解消の見通しが立たない。国際市況を反映する大阪取引所のトウモロコシ先物相場は1年前から約4割上昇。菜種とともに北米の高温と乾燥で供給不安が強まった。パーム油は東南アジアのコロナ流行で労働力不足が生じ、供給が滞ったという。需要面では中国の穀物輸入が盛んなほか、米国ではバイオ燃料利用が広がる。
9月にジャガイモの高値が予想されるなど、生鮮食品の一角には国内の天候不順の影響が及ぶ。
全国のスーパーを束ねる日本チェーンストア協会の井上淳専務理事は「コロナの中での節約志向があり、価格に対する目は厳しい。値段が上がると消費を減らす恐れがある」と懸念を示した。