ドクターヘリの重要性について講演する篠田伸夫会長=出雲市今市町、ホテル武志山荘
ドクターヘリの重要性について講演する篠田伸夫会長=出雲市今市町、ホテル武志山荘

 旧出雲市の元助役で、認定NPO法人救急ヘリ病院ネットワーク(HEM-Net、東京都)の篠田伸夫会長(82)がこのほど、出雲市内で講演し、ドクターヘリの夜間運航に向けた体制整備の必要性を訴えた。

 医師らが同乗し、患者の元に駆けつけるドクターヘリは国内では2001年に運航を開始した。島根県内では11年に導入された。

 篠田会長は1995年の阪神大震災が国内運航の契機になったと指摘。当時は防災ヘリなどで患者の搬送をしていたが、発生日は消火などの対応で手が回らず、1人しか運べなかった。

 多量出血では15分を経過すると死亡率が上がり、30分で5割に達する「カーラーの救命曲線」を示しながら、震災で亡くなった6千人超のうち500人については初期治療を行えば「助かる命」だったとした。

 現在、全都道府県で57機が飛んでいるものの、15~30分以内の治療開始には72機が必要だと強調。また、現在は日中運航だが、救急要請の4割以上が夜間というデータを示し「安全との両立、多額の経費、操縦士の確保など解決すべき大きな課題があるが、夜間運航の実現に向け声を上げていきたい」と力を込めた。

 講演は、出雲ライオンズクラブの認証65周年を記念して開催。130人が聴講し、同クラブはHEM-Netが取り組むドクターヘリ搭乗者の安全訓練支援に50万円を寄付した。(佐野卓矢)