秋篠宮家の長女眞子さまの結婚が年内にも実現し、皇室を離れる見通しになったことを受け、政府による皇族数減少対策は一層の急務となった。政府の有識者会議は女性皇族が結婚した後も皇室に残ってもらう案を検討しており、来年の通常国会で法整備を目指す動きもある。ただ家族の金銭トラブルを抱える小室圭さんとの結婚が世論や国会の議論に影響を与えるのは必至で、制度設計の前提となる「静かな環境での検討」(菅義偉首相)が難しくなる可能性がある。
「方向性」公表
「皇族数確保の方策については、有識者会議で議論を続けている」。1日の記者会見。加藤勝信官房長官は、眞子さまの結婚が今後の協議に与える影響を問われ、正面からの回答を避けた。
政府や会議は当初、国論を二分する論争に発展する事態を回避するため、結論は論点整理にとどめ、秋の衆院選が終わった後に国会へ報告する段取りを描いていた。
しかし会議は7月下旬の第10回会合で、皇族確保策について(1)女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持することを可能とする(2)皇族の養子縁組を可能とすることで、皇統に属する男系男子が皇族となるのを可能とする―の2案を軸とした文書「今後の整理の方向性」を突如公表し、議論を一気に加速させた。
早急に手を打たないと「極端な場合、皇族が誰もいなくなる」(会議座長・清家篤元慶応義塾長)との危機感が背景にある。眞子さまの年内の結婚は「織り込み済み」(政府関係者)で、世論を刺激する前に方向性を出すことを急いだ節もある。会議はこの中間整理を深めるため、政府に海外王室の事例など具体策の調査・研究に入るよう求め、まとまり次第、会議を再開することにした。
皇室典範は「皇族女子は、天皇および皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」「天皇および皇族は、養子をすることができない」と定めており、中間整理を実現するには皇室典範改正か特例法制定が必要になる。
保守派の反対
眞子さまの皇籍離脱で、未婚の女性皇族は5人に減る。天皇陛下の長女愛子さま以外は成人しており、愛子さまも12月に20歳の誕生日を迎える。皇室典範の規定が現状のままなら、近い将来、女性皇族が結婚を機に皇室を離れ、次世代の皇族は秋篠宮さまの長男悠仁さま1人となる可能性もある。
会議の専門家ヒアリングでは、所功・京都産業大名誉教授が「愛子さまが結婚されても皇室にとどまり、ご両親を支えられるようにする必要がある」と主張。政府内にも「来年の通常国会には関連法案を提出し、制度化を実現したい」(首相官邸幹部)との声がある。
だが女性皇族の皇籍維持案は、自民党内などの保守派の反対が根強く「丁寧に進めないと即座に頓挫するテーマ」(官邸筋)だ。眞子さまが結婚関連儀式をせずに渡米するという異例の形となれば、皇室の在り方に関する議論を喚起することも想定される。政府筋は「事態の沈静化を待つ必要がある」と指摘しており、会議を再開する時期の判断が難しくなったとの見方も出ている。