島根県内の中国山地で目撃や捕獲例が相次いでいるニホンジカ(資料)
島根県内の中国山地で目撃や捕獲例が相次いでいるニホンジカ(資料)

 松江市の八雲立つ風土記の丘に展示されている重要文化財の埴輪(はにわ)「見返りの鹿」は、愛らしい表情で人気の遺物だ。古来、シカは神獣といわれ、人間と共存してきたが、島根県内では一時期姿を消していた▼県中山間地域研究センター(飯南町)の調査書を読むと、安来市から吉賀町にかけての県内の中国山地では明治から昭和初期にニホンジカの生息は認められず、絶滅したとされた。2002年、狩猟で捕獲されたのを皮切りに年々姿を現し始めている▼この夏、県内のゴルフ場でシカがコースを横切るのを見た。タヌキやウサギとの遭遇はあったが、シカは初めて。のんきなことは言っていられない。中国山地のシカは大繁殖と言っていいほど増えた▼一足早く広島県北では異常事態の様相だ。県北部森林管理署管内では、今年6月時点の推計生息数が5万1399頭で、02年の4・4倍。隣接する島根県邑南町周辺でも増加が顕著となっている▼イノシシ、ウサギ、カモにクマなど、「山の幸」を使ったジビエ料理はいろいろ試してみたものの、正直なところ毎日食べたいとは思えない。畜産農家のおかげで牛肉や豚肉があまりにもおいしく改良されたためだろうか。古代から日本人がシカを食ベてきたことを思うと情けない。「(シカを)食うか、(農作物や植林を)食わせるか」の2択は厳しい選択だ。源流の「シカ問題」は下流の食生活にたどり着く。(裕)