英国やフランスに「prudence」という言葉がある。もとはラテン語の「prudentia」で、原義は先々まできちんと見通すことである。そこから倹約、慎重、抜け目なさなどさまざまな意味が派生する。

 これは外交安全保障の世界で長らく重んじられた価値で、しばしば「慎慮」と訳される。力の配置や移行を見極め、自国の利益の在りかを考え抜き、規範を味方につけていく。戦後フランス...