感染拡大要因について説明する島根県の谷口栄作・医療統括監
感染拡大要因について説明する島根県の谷口栄作・医療統括監

 7、8月に山陰両県で新型コロナウイルスの感染者が急増した。昨年夏の感染状況と比較すると、この夏の感染者数は島根県が7倍(昨年の私立学校のクラスターを除けば、162倍)、鳥取県は50倍にもなり、桁違いの規模だ。この夏の感染者推移や感染場所を分析すると、クラスター(集団感染者)発生の大きな原因に「マスクを外す場面がある場」「屋内で人が密接になる場」「共同生活をする場」が挙げられる。感染の危険が高い場面を避けることが一番だが、感染防止を徹底しながら、飲食店などを利用するにはどうしたらいいのか。具体的な対応策を島根県で新型コロナウイルス対策を担当する健康福祉部の公衆衛生医師、谷口栄作・医療統括監に聞いた。(Sデジ編集部・吉野仁士)

 7、8月の感染拡大について、谷口医療統括監は仕事の出張やお盆の帰省といった、「都市部からしみ出た県外感染者」との飲食が大きな原因とみる。

 谷口医療統括監は「誰しも普通に人と接触する際は、マスクをして感染に気を付けている。しかし、飲食店はマスクを外して飲食する場所。どうしても少しはマスク無しで話す瞬間があるため、他の場面よりも飛まつ感染のリスクが高まってしまう」と、感染リスクについて説明する。

 飲食店でアクリル板の設置や客同士の距離を取るなどの対策が取られていれば感染の恐れは減る。逆に客同士や従業員との距離が近くなる接待を伴う飲食店や大声を出すカラオケがある飲食店、ライブハウスは飛まつ感染の危険性が高い。

 ▼「1密」でも危険

「感染要因の大部分はマスク無しでの会話に起因する」と話す谷口栄作・医療統括監

 今の感染拡大は感染力の強いデルタ株の流行が大きな原因だ。

 島根県の調査では、8月末時点で推定される感染要因のうち最多は「家庭内」の37%、次に「会社・仕事関連」の18%。しかし、谷口医療統括監は、直接の感染要因は家庭とは別にあると指摘する。

 「デルタ株は感染力が強いので、マスクを外すことが多い家庭で増えている。そもそもウイルスが家庭に入り込んだ原因を考えると、働く親が仕事絡みの会食などで感染して持ち帰り、家庭内で広がるケースが多いのでは」と分析している。

 8月の感染者は9割がデルタ株。昨年は1人が感染しても家庭内ではあまり拡大しなかったが、デルタ株の感染者は必ずと言っていいほど家庭内の数人に感染を広げている。家庭内感染には注意が必要だ。昨年もお盆の帰省はあったが、今夏の感染者数が全く違うのはウイルスの感染力の差だ。

 谷口医療統括監は「従来は3密(密閉、密集、密接)がそろう場面が危険と言われたが、今は1密でも危険だ」と強調した。「1密でも危険」。感染防止のためにはこれまでの意識をあらためる必要がある。

 ▼対策徹底の店へ「認証マーク」

 「1密」を避ければ感染の危険性は格段に下がるが、飲食店の利用は難しくなる。感染対策を徹底した飲食店を利用できるよう、島根県が9月から始めたのが「島根県新型コロナ対策認証店制度」だ。

 制度は県が設定する感染防止対策の基準を満たした店に、認証マークを交付する仕組み。「しまねっこ」をデザインした分かりやすいマークが店頭に貼り出されるため、一目で分かる。

 申請のあった飲食店に対し、調査員が出向き、基準を直接確認する。確認項目は、真正面での着座配置をしない▽テーブル上にアクリル板などを設置する▽店内の必要換気量(1人あたり毎時30立方メートル)を確保する▽歌唱する時は対人距離を2メートル以上確保するーなど最大43項目にもおよび、感染要因を最小限に抑えた店舗のみが認証される。

感染防止対策の基準を満たしているかどうかを確認する調査員(右)=松江市八束町波入、竹りん

 ▼飲食店も「安心」

 県の制度による「お墨付き」が分かるのは、利用者だけでなく飲食店にとっても朗報だ。

 県内の飲食店やスナック約100店舗が加入する島根県飲食業生活衛生同業組合によると、新型コロナの影響で大規模な宴会が全て無くなった上に来店者も減り、ほぼ全店で売り上げが激減した。県には、給付金の支給や給付金制度の支給条件緩和を過去2回求め、業界の窮状を訴えてきた。

 組合の後藤勇理事長(79)は「これまでも国のガイドラインやコロナの特性を調べた上で対策を取っていたが、県が現場を直接見た上での認定なら安心できる。制度を機に少しずつでも飲食店の利用が増えてほしい」と期待を寄せた。

 飲食店を利用する際には感染対策が徹底された認証マークがある飲食店を利用すれば、感染の危険性をある程度抑えながら飲食を楽しむことができそうだ。

感染防止対策基準を満たした飲食店に交付される認証マーク。しまねっこが目印だ

 おさらいすると、現在、特に注意すべきは「県外往来者とマスク無しで接触しない」「飲食する場合は感染対策が徹底された飲食店を選ぶ」の2点だ。少なくとも都心部での感染拡大が収まるまでは注意を継続する必要がある。

 両県の感染者がここ数日減少しているように見えるが、患者総数はともに依然として100人以上と高い。緊急事態宣言が発令されている都会地では自宅待機中に容態が急変して亡くなる人も出ている。山陰の医療現場は今、感染者の急増で緊迫した状態が続いている。医療現場の負担を軽減しつつ地域経済へのダメージを抑えていくため、感染状況を正しく認識し、感染防止の意識を徹底していくことが求められる。