浜田漁港のブランド魚「どんちっちアジ」の今年の水揚げ量が、記録が残る2007年以降で最低に落ち込む見通しとなった。餌環境の変化から脂乗りが進まなかったのが一因。水揚げ不振が続く状況に、加工・販売業者からは悲鳴の声が上がる。
どんちっちアジは、旬に当たる4~9月に水揚げされたマアジを脂質含有量などの基準で認定する。
今年の初水揚げは07年以降で最も遅かった昨年並みの5月23日で、その後徐々に増えたが、7月18日を最後に認定は止まった。水揚げ量は130・4トンで、07年以降最低だった19年(238・6トン)より100トン余り少なく、このまま期間終了の9月末を迎える見通しだ。
島根県水産技術センター(浜田市瀬戸ケ島町)などによると、今年は対馬暖流に乗って北上するマアジの群れの回遊が遅れたが、6月以降は急激に増加。4~7月の漁獲量は1920・8トンとなり、2カ月を残して前年4~9月の2168・7トンにほぼ並んだ。
ただ脂質含有量が基準に満たない個体が多く、解剖して調べたところ、脂質の多い動物性プランクトンではなく、貝の一種で低脂質のカメガイなどを餌にしていることが確認された。原因は不明という。
巻き網漁の裕丸漁業生産組合(同市大辻町)の渡辺祐二専務理事は「カメガイの捕食がこれほど多かった年は経験がない」と語る。来年以降の水揚げについて「上向くだろうが、豊漁だった頃までの回復は望みにくい」と厳しい見通しを示す。
加工・販売業者にとっても痛手だ。どんちっちアジの一夜干しをネット販売するプローバ島根支店(同市浅井町)は原魚不足を見越し、7月中旬に追加発注した。吉田辰也支店長は「歳暮商戦まで在庫があるか不透明。他魚種のラインアップを増やして対応するしかない」と気をもむ。 (村上栄太郎)