国内初の自宅療養者への抗体カクテル療法を実施する医師ら=〓(?)日午後、大阪府内(KISA2隊提供、画像を加工しています)
国内初の自宅療養者への抗体カクテル療法を実施する医師ら=〓(?)日午後、大阪府内(KISA2隊提供、画像を加工しています)

 新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ抗体カクテル療法を国内で初めて自宅療養中の感染者に実施した大阪府の医師が20日、共同通信の取材に応じ「医師が長時間拘束される。担い手となる医師の確保が課題だ」と語った。政府は自宅投与について、府などでモデル事業として実施し、全国に拡大する方針。

 

 葛西(かっさい)医院(大阪市生野区)の小林正宜院長(38)ら医師、看護師計3人は17日夕、発熱などの症状がある府内の30代女性宅に到着すると、玄関でガウンなどの防護具を身に着けて室内に入った。女性は当初、投与に不安そうな様子だったが、効果や副反応について説明を聞くと次第に落ち着いた。

 小林院長は府と府医師会が協力して立ち上げた自宅療養者の往診チームのメンバー。抗体カクテル療法は2種類の抗体5ミリリットルずつを混ぜて100ミリリットルの生理食塩水で希釈し、約30分かけて腕に点滴する。3人は交代で女性のそばにつき、他の人は感染防止のため玄関にいた。投与後は近くに止めた車で約1時間半待機。容体の急変がないことを確認して引き揚げた。

 女性は14日に発症。基礎疾患があり重症化リスクが高かったが、子どもが幼く、入院や宿泊療養は難しかった。医師らはその後も電話で経過観察を続けているが異常はなく、症状は快方に向かっているという。

 小林院長によると、現状では待機時間を含めて2時間半ほど拘束されるため、急変した場合に駆け付けられる医師を別に確保するなど態勢拡充が必要だという。「抗体カクテル療法の対象は発症から1週間以内で比較的症状が軽い人。患者さんの状況を把握して迅速に動かないと活用できない」と別の課題も挙げる。

 感染拡大の「第5波」のピーク時には、自宅療養者は全国で十数万人となった。自宅療養者への医療提供が今後の感染拡大でも課題となる。鍵は保健所や地域医療を担う医師らの連携だ。小林院長らのチームに参加しているのはまだ6診療所。規模が大きくなれば医師1人の負担は減る。小林院長は「今のうちに大阪で知見を重ねて態勢をつくり、全国のモデルにしたい」と意気込む。