中国が環太平洋連携協定(TPP)への加入を正式申請した。今後の発展戦略として、国際社会の自由貿易体制を擁護しながら経済改革を推進し、アジア太平洋の主要各国と連携を深めていく方針をアピールした。

 TPPを離脱した米国は激しい米中対立の中で中国経済のデカップリング(切り離し)も示唆して圧力を加えていた。中国はTPP加入申請により、米国主導の対中包囲網に鋭いけん制球を投げた形だ。

 知的財産権の保護や国有企業への優遇制限などTPPルールのハードルは高く、加入は容易ではない。だが、加入交渉は中国に抜本的な改革を促すチャンスだ。日本などTPP参加国は交渉を通じ、公正で透明度の高い経済貿易制度への転換を粘り強く求めたい。

 TPPは日本やオーストラリア、シンガポール、カナダなどアジア太平洋地域の11カ国が参加する要求水準の高い経済連携協定(EPA)。当初は米国を含む12カ国が署名したが、2017年に貿易保護主義に動いたトランプ米政権が離脱し、翌18年末に発効した。

 中国の習近平国家主席は昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、TPP参加を「積極的に検討する」と表明していた。狙いは一層の経済発展と米国けん制の二つだ。

 習氏は来年の共産党大会で総書記3選を果たし、続投する構え。今年7月、党創建100年の演説で貧困脱却の実績を誇示。今世紀半ばの建国100年までに「近代的な社会主義強国」を築く目標を改めて強調した。

 習氏は米国を抜く世界一の経済大国の地位を視野に入れるが、経済成長の減速や貧富の格差、新型コロナウイルスの影響など懸念材料も多い。TPP加入は外圧で経済貿易制度の改革を進める一方、アジア太平洋地域で影響力を強め、経済成長を図る戦略的な動きだ。

 米国は自らの超大国の地位を脅かす中国を抑え込もうと日欧やオーストラリア、インドなどと連携して軍事や人権、経済などの面で包囲網を強化してきた。加入申請はTPPを離脱した米国への強烈な反撃で、TPP参加に意欲を示す台湾をけん制する狙いもあろう。

 TPPは習氏が推進してきた巨大経済圏構想「一帯一路」を補強する。安倍晋三前首相は17年、経済性や透明性などの条件付きで「一帯一路」を支持し、対中関係改善を進めた。日本はTPP交渉で条件の徹底を求めることができよう。

 米国のTPP復帰も期待したい。加盟11カ国の世界の国内総生産(GDP)に占める割合は13%だが、米国が加われば4割近くになり、さらに中国加入が実現すれば5割を超す自由貿易経済圏が誕生する。

 米国は対中貿易摩擦の中で、知的財産権の保護や国有企業への優遇停止などを求めてきた。復帰すれば、多国間で中国に経済の公正化を要求していくことが可能だ。

 TPPルールは電子商取引で情報の自由な越境移転を求めているが、中国のデータ統制の法律と相いれないなど問題は山積する。西村康稔経済再生担当相は「極めて高いレベルのルールを満たす用意ができているのか見極める必要がある」と慎重な姿勢を示した。

 確かに中国の真剣さや加入時期の目標は不透明であり、今後の動きを注視したい。