世界の投資資金を呼び込める魅力的な市場に生まれ変わることができるのか。東京証券取引所が進める市場区分の見直しは日本市場の再生に欠かせない基盤整備だ。日本経済のさらなる進化につなげたい。

 2021年までの10年間、米国やアジアの株式市場が取引量や時価総額を大きく伸ばす一方、東証は伸び悩み、世界市場の中での存在感に陰りが出ている。上場している日本企業の業績にも問題はあるのだろうが、市場の仕組みそのものにも深くメスを入れ、世界の主要市場と肩を並べられるように制度を整えなければならない。

 東証、関係当局には内実を伴った制度設計に尽力するよう求めたい。上場企業も、制度変更の趣旨をよく理解し、経営の質の向上に取り組まなければならない。

 区分見直しは、現在、事業規模などに応じ1部、2部、マザーズ、ジャスダックの4部構成になっている市場を22年4月から3部構成とするものだ。大企業中心のプライム、中堅企業向けのスタンダード、新興企業のグロースの三つに編成する。企業は、それぞれの市場の機能を確認した上で上場先をあらためて検討することになる。

 現在の4部構成は2部、マザーズ、ジャスダックの位置付けが重複しているなどそれぞれのコンセプトが曖昧で、市場としての特長、役割が投資家から見て分かりにくく、利便性が低いとの指摘がある。さらに、上場廃止基準が緩やかなため、上場企業がさらなる価値向上に向かう動機づけが十分ではないとの見方も強い。

 こうした弱点を改めるために、東証はそれぞれの市場が担う機能を明確に定義した。プライムは「グローバルな投資家との対話を中心に据えた企業向け」とした。スタンダードは「投資対象として十分な(株式の)流動性とガバナンス水準を備えた企業向け」と位置付けた。グロースについては「高い成長可能性を有する企業向け」との狙いを打ち出した。

 海外投資家の大口資金を狙う中核のプライムでは、厳格な基準を設けた。保有者が固定されておらず、個人などが自由に売買できる流通株式の比率を全体の35%以上、時価総額を100億円以上とした。安心して投資対象とすることができるように潤沢な流動性を確保することを狙った措置だ。

 これによって、親会社が多数の株式を保有しながら上場している子会社は親会社が、創業者が大多数の株式を持っている企業は創業者が、一定数の株式を手放さないと、プライム上場の基準を満たすことはできなくなる。さらに社外取締役を全体の3分の1以上置くことや気候変動に関する情報公開も求められる。 

 市場では大株主が株を売却するなど基準達成に向けた動きも見られるが東証は7月、1部上場2191社の30・3%に当たる664社がプライム基準を満たしていないと発表した。

 東証は基準を満たしていなくても、改善に向けた計画書の開示などを条件にプライム上場を認める経過措置を設ける。激変緩和は必要かもしれないが、その期間が長期間に及ぶと、企業側の取り組みが緩む恐れもある。

 「裏口入学」のような上場が続けば、市場への信認が揺らぎかねない。経過措置期間はできるだけ短縮したい。