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紙面でたどる島根原発の歴史(1966~2022年)

【1966年10月11日】 島根半島に原子力発電所建設 中電が構想を発表 1966年10月12日付島根新聞(現山陰中央新報)  中国電力(本社広島市、桜内幹雄社長)は十一日、「第一号原子力発電所を島根県の島根半島に建設する」との構想を発表した。それによると四十六年度着工、四十九ー五十年度に完成の予定で、出力は三十五万キロワット程度を計画している。  一昨年に原子力発電所建設にふみ切った中国電力は航空写真などによる候補地の調査をつづけていたが、このほど中国地方第一号原子力発電所を島根半島の日本海沿岸部に建設する方針を決めたもので、今年度中にボーリング調査などを行うことにしている。桜内同社社長は八日に古瀨県水商部長、十一日には田部知事に県の協力方を要請した。  同社が島根半島に建設地をしぼった理由については「あらゆる客観情勢と経済性(中海新産都市への電力供給など)」と答えている。三十八、九年に県が通産省の委託でボーリング調査をやり、地元で誘致運動が行われている益田、江津両市については、地元電力消費が少なく山陽に送電するためには送電ロスが多くて採算に合わない・・・として建設する意思はない。  島根県の電力消費量は現在最高十二万キロワットだが、中国電力では将来の中海新産都市にそなえてことし夏に大和村の潮発電所から八雲村まで十一万ボルトの送電線をひき、ここ十年は電力供給体制に万全の措置をとったが、こんどの原子力発電所建設計画によって将来この地方は電力では絶対心配はなくなるわけ。電力需要がふえれば原子力発電炉を二基併設することも計画しており、建設地はかなり広い面積を予定している。  発電炉の型については公表していないほか、加賀の潜戸(くけど)、美保関の島々など国立公園の特別指定地には建設しないことにしている。  日本では三十二年に日本原子力研究所が設立され東海村に実験炉ができてから現在までに営業用発電炉は二ヵ所運転し、三ヵ所で建設中である。すでに発電コストも石炭燃料とじゅうぶん対抗できるところまでいっている。いままでの原子力発電炉では公害はほとんど発生していないようで、むしろ観光施設として観光客誘致にも大いに役立っているのが実情。  中国電力の原子力発電所建設計画について県は伊達副知事が十日、島根半島六市町村の市町村長に同社の計画を伝えたが、各市町村長は急な発表だけに市町村議会、地元住民の意見をもとに態度を決めることにしている。市町村の中には航空調査にせよ調査しているのなら事前に市町村にも知らせておいてよかったのではないか・・・という声も出ている。 ■伊達島根県副知事の話  島根県に原子力発電所ができるのは結構なことだ。県ではかつて地元民の熱意によって益田、江津の両市で原子力発電所の適地調査を行ったが、中国電力が島根半島を建設予定地に決めているのはこんどはじめて知った。益田、江津につくったのでは年間三億円のロスが出て採算に合わないという会社側の話だった。採算性のことをいわれれば中電がつくる発電所だけに県としてはどうともいえない。他県の原子力発電所の状況をみても絶対安心とはいえないまでもまず安心してよいと思う。安全性さえ心配なければ県としても従来の方針からいって賛成してよいだろう。 【1973年6月1日】 西日本初の原子の火ともる 中電島根原子力発電所   1973年6月2日付山陰中央新報  中国電力島根原子力発電所(総出力46万キロワット、島根県八束郡鹿島町片句)は一日午前、原子炉が「臨界」に達し、全国で七番目、西日本では初めての〝原子の火〟がともった。同発電所ではこの日午前十一時から運転の安全を祈る神事のあと、関係者百三十人が見守る中で桜内乾雄中国電力会長、吉山博吉日立製作所社長、丸山賢三郎島根原発建設本部長が制御棒を抜くリモコンスイッチを操作。同十一時二十四分二十秒、「臨界到達」を告げる赤いランプがともると一斉に拍手がわき起こった。同発電所は七月下旬まで原子炉の出力試験などを繰り返し、八月上旬には総出力の一二%にあたる五万キロワットを試験発電、地元の不安と期待が交錯する中で十一月からの本格的運転に備える。  島根原発は四十三年七月着工以来、五年の年月と総工費三百七十億円をかけて完成したもので、原子炉は日立製作所がアメリカGE社と技術提携して製作した国産第一号の沸騰水型軽水炉。ことしの四月ですべての建設工事を終わり、五月一日から原子炉への核燃料装荷を始め、二十四日には四百本(低濃縮ウラン八十トン)の装荷を完了してこの日を迎えた。  一日は午前十一時から原子炉建て物内部の中央制御室に設けられた祭壇で神事が行われ、桜内会長、吉山社長、丸山建設本部長はじめ技術者、職員百三十人が運転の安全を祈願した。このあと制御棒の操作電源を入れ、桜内会長らが制御棒を抜くスイッチを操作、午前十一時二十四分二十秒、臨界に達した。  核分裂反応