中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句、出力82万キロワット)が7日、再稼働した。稼働は12年11カ月ぶり。中電は今月下旬に発送電を始める予定で、来年1月上旬の営業運転再開を目指している。島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地し、半径30キロ圏に全国で3番目に多い約45万人を抱え、避難計画の実効性など稼働後も課題が山積している。(高見維吹)
【Q&A】中国電力島根原発2号機 なぜ再稼働させたい? 沸騰水型原発の特徴は?
2号機は2011年3月に事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型。同型の再稼働は東北電力女川原発2号機(宮城県)に次いで2基目で、福島事故後、国内で再稼働した原発は8原発14基となった。
7日は午前9時15分に原子力規制委員会から「試験使用承認書」を受領。2号機の中央制御室で午後2時58分に運転員がモードスイッチを「燃料交換」から「起動」に切り替え、核分裂を抑える制御棒を引き抜く作業を進め、同3時に原子炉が起動した。1時間50分後に核分裂反応が持続する「臨界」に到達した。今後、原子炉を一度停止して機器の状態を確かめるなど発送電に向けた検査、確認を実施する。

安全対策工事は10月28日に完了し、燃料計560体を原子炉に入れる「燃料装荷」を11月3日に終えた。原子炉圧力容器と原子炉格納容器のふたを取り付け、耐圧や漏えいの検査を同月30日までに実施した。
原発事故に備えた避難計画の策定が必要な30キロ圏に松江、出雲、安来、雲南、米子、境港6市が入る。島根県は12年に全国に先駆けて広域避難計画を策定。訓練を重ね、見直してきたが、自力で避難が難しい要支援者約5万7千人への対応など課題は多い。
中電は13年12月、2号機の新規制基準適合性審査を規制委に申請。島根原発の南約2キロを走る「宍道断層」の長さ評価が申請時の全長約22キロから約39キロに延びるなど合格まで7年9カ月を要した。安全対策で基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)を820ガルに設定し、海抜15メートルの防波壁を建設。電源や冷却手段も多様化し、原発全体の安全対策工事費は現時点で約9千億円に上る。
当初は8月の再稼働を目指したが、23年12月に原発構内で起きたコンクリート塊の落下による作業員の死亡事故で、安全対策工事に遅れが生じた影響などで12月に延期していた。