ロケのため松江入りし、島根県の観光キャラクター・しまねっこと記念写真に写る「ばけばけ」の主役、高石あかりさんとトミー・バストウさん=1日、松江市殿町の島根県庁
ロケのため松江入りし、島根県の観光キャラクター・しまねっこと記念写真に写る「ばけばけ」の主役、高石あかりさんとトミー・バストウさん=1日、松江市殿町の島根県庁

 小泉八雲の妻セツがモデルのNHK連続テレビ小説『ばけばけ』の放送が29日に始まる。高石あかりさんら主役の2人は2回目の松江ロケ中で、水都の景色に魅せられているそうだ。

 もとより本物の八雲が絶賛した山陰の地は多い。宍道湖と斐伊川を結び、水運の要衝だった出雲市斐川町荘原地区もその一つ。1890年9月、出雲大社へ参拝するために蒸気船で立ち寄り「いかにも絵にかいたような美しい町なので、できれば、一日ここで過(すご)して行きたかった」と『知られぬ日本の面影』に記した。

 その荘原に「八雲西」「八雲東」の地名がある。1950年には八雲中学校も開校。65年に現在の斐川東中学校に改名されたが、この名はもしや小泉八雲にちなむのか。郷土史家によれば、今は廃止された川に1891年に開通した国道橋「八雲橋」に由来するという。出雲の枕詞(まくらことば)である「八雲立つ」から島根県が命名し、八雲中や地名は橋から名付けられた。

 県が出雲の枕詞を用いたのは荘原が出雲を代表するほどにぎわっていたからだろう。作家の田山花袋は1922~23年の紀行集の一編『宍道湖』に「さびしいところになつて了(しま)つたであらう。しかし、その時分は、庄原(荘原)は賑(にぎ)やかであつた。湖の港として霞ケ浦の土浦、琵琶湖の大津、それ以上に賑やかであつた」と記した。

 もうすぐ始まる『ばけばけ』。往時の風景を想像しながら楽しみたい。(衣)