枝いっぱいに実をつけた柿の古木=2019年10月、雲南市内
枝いっぱいに実をつけた柿の古木=2019年10月、雲南市内

 写真やカメラに関する言葉に「記録色」と「記憶色」があるそうだ。記録色はカメラで撮影した時に記録される実際の色。記憶色はイメージとして刻み込まれた色のことで、人の脳は実際より色鮮やかに記憶する傾向があるという。

 新聞の写真は忠実な記録色になるのが望ましいが、見たままの色を出すのは意外に難しい。明るさが適正でなかったり、照明によって青や赤の色かぶりを起こしたりすることもある。フィルムで撮影していた頃は、いつもひやひやで失敗も重ねた。

 デジタル写真の時代になって色調整や加工の幅は広がり、人工知能(AI)を使って白黒写真をカラー写真にできるようにもなった。戦後80年。歴史に関心を持つきっかけにと、戦前から戦後の白黒写真のカラー化がいろいろなところで取り組まれる。記憶の風化が懸念される中、当時の様子が伝わりやすくなるだろう。

 色に関する繊細な感覚は、日本の良さの一つだと思う。四季折々の自然の彩りなどに由来し、暮らしの中に根付く和の色は、日本人が受け継いできた記憶色ともいえる。黄色系をとっても菜の花色、刈安色、山吹色、支子(くちなし)色、鬱金(うこん)色などと細かい。趣深い色名を後生に伝えたい。

 これからの季節、自然の中に色が増えていく。栗色、柿色、紅葉色、朽葉色。身近にある色を見つけ、写真に収めるもよし、脳裏に焼き付けるもよし。秋の小さな楽しみにどうだろうか。(彦)