1993年の日本シリーズでヤクルトを日本一に導き、ナインに胴上げされる野村克也監督
1993年の日本シリーズでヤクルトを日本一に導き、ナインに胴上げされる野村克也監督

 「ノムさん」の愛称で知られたプロ野球の名将・野村克也さんは幾多の名言を残している。その一つが「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。どうして勝ったのか分からない不思議な勝ちがある半面、負ける時は負けにつながる必然的な要因があるという意味だ。

 江戸時代の大名で剣術の達人でもあった松浦静山の言葉を引用したそうだ。剣術を野球に置き換え、敗因を総括して改善策を導き、実践に移す。どの業界にも通じる考えである。

 さて、こちらの敗因は何だったのか。自民党が参院選大敗に伴う総括報告書を取りまとめた。派閥裏金事件をはじめとした「政治とカネ」問題や、物価高対策の浸透不足など複数の敗因を挙げたものの、党総裁である石破茂首相の個人的責任について言及を避けた。一方、首相の続投に批判的な議員が反発しており、党は退陣要求を受けた総裁選前倒しの是非を問う手続きに入った。

 直近の世論調査は「首相は辞める必要はない」という声が増えている。裏金事件に関わった議員が「石破降ろし」を謀ることに忌避感が強いのだろう。ただ、首相が裏金事件に正面から向き合ってこなかった結果が大敗につながったのも事実だ。

 5年前に逝ったノムさんはこんな名言も残していた。「結果の責任は、すべてリーダーが取る」。党四役が退任意向を示す中、責任を問われるリーダーはどんな策を導くのか。(健)