地域経済を活性化する手っ取り早い方法は企業誘致である。雇用が拡大してにぎわいが生まれ、自治体の税収が増える。成果が最も目に見えるのは今も昔も変わらず製造業か。
大田市が面白い手を仕掛けてきた。誘致するのは書店。それも特化した条例まで設けるという。創業後10年間で毎年最大500万円を助成し、昨年から続く無書店自治体の解消を図る。公金をどこまで投入するかは賛否があるだろう。それでも「世界遺産がある文化のまちで書店がない状況を解消したい」と、知的好奇心を埋める妙手をひねり出した市の決断を応援したい。
自治体にとっては誘致できれば成功だが、書店は利益を出し、持続可能な経営が実現して初めて成功となる。全国で無書店自治体は3割に近づき、1軒しかない予備軍も増えている。いっそのこと図書館に本を納入したり、小中学校の教科書や副読本を納品したりする場合は、その地域の書店から定価購入する支援も考えたい。
書店員や出版社営業を経て、公立図書館長も務めた異色の経歴を持つ藤坂康司さんは、理想の書店像について「客同士が交流サイト(SNS)でつながり、店長の目が隅々まで届き、サンダル履きで行ける居場所としての本屋」とする。
誘致に併せて、支える市民の地ならしを進め、新たな書店の価値を見いだしたい。顔が見えるコミュニティーが整う大田市にはその余力が残っている。(玉)













