地元書店から図書館に届けられた本を選ぶ職員=鳥取市尚徳町、鳥取県立図書館
地元書店から図書館に届けられた本を選ぶ職員=鳥取市尚徳町、鳥取県立図書館

 地域書店の経営を維持するため、出版4団体が今月から公立図書館や官公庁に書籍を販売する際に定価購入を求める方針を決めた。これまでは入札による価格競争が繰り広げられており、規模の小さな書店は不利だった。図書館や官公庁が地元書店から定価で買えば、経営安定につながる一方、自治体にとっては購入費が上がったり、職員の業務量が増えたりする恐れがあり、移行するかどうかは不透明だ。

 出版物は、再販制度で定価販売の義務付けが認められているが、図書館や官公庁の入札に応じて納入する場合は、適用しない規定があった。このため公立図書館は入札による購入が広がり、地元書店が落札しにくい実態があった。

 鳥取県立図書館は30年以上前から、地元書店から購入図書の9割以上を仕入れている。本のラミネート加工も依頼し、費用は別で計算。地元書店と図書館の関係づくりは「鳥取方式」として全国から注目を集めるが、資料課の岩崎武史課長は「各館で長年培ってきた購入ルールがあり、変更するのはそう簡単ではない」とみる。

 図書館側にとって大手を利用するメリットは多い。ラミネート加工に加え、データベース登録のサポートまで手がけるからだ。地元書店で大手ほどのサービスは困難とされ、職員の負担が増す恐れがある。

 2023年度に約1万冊を購入した島根県立図書館の大野浩・資料情報課長は「全ての本のラミネート加工を現在の職員数で行うのは難しい」と明かす。購入先とは年間契約を結んでいるとし「変化があるとすれば来年度以降。業者が本当に定価に値上げするのかどうか、動きを見極めて判断する」と話した。

 これまでラミネート加工をサービスで行って納入してきた島根県内の書店経営者は「収入が増えるのは喜ばしいが、図書館がコストを抑えるために結果的に購入する冊数が減れば本末転倒だ」と打ち明けた。(森みずき)