開放感がある館内の様子=出雲市大社町杵築南、大社図書館
開放感がある館内の様子=出雲市大社町杵築南、大社図書館

 秋が深まって夜が長くなり、のんびり読書をするのにいい季節になった。この秋、気になっていた本や新しいジャンルの本を読んでみたいと思っている人も多いのでは。そんなあなたにお薦めなのが図書館。じっくり本を選んだり、座って読書に没頭したり、本に囲まれた静かな空間でのんびりと過ごしたりと、さまざまな楽しみ方ができる。山陰両県の図書館を紹介する「山陰図書館巡り」、後編では出雲市立大社図書館(出雲市大社町杵築南)、鳥取県立図書館(鳥取市尚徳町)、米子市立図書館(米子市中町)を紹介する。(Sデジ編集部・宍道香穂)

(上)はこちら ⇒オーシャンビューの施設も、「読書の秋」は図書館へ! 山陰両県の主要&ユニークな図書館を紹介<上>

大社図書館(出雲市大社町杵築南)
 
 次に紹介するのは、出雲市立大社図書館。出雲大社のお膝元で、曲線が特徴的な文化施設「大社文化プレイスうらら館」に併設されている。館内にも曲線が多く取り入れられ、中心部の吹き抜けや絵本コーナー、壁に沿うように設置された机、カウンターまでも円形。角がなく、ころんと丸いシルエットがあちこちに見られ、気分がほっと落ち着く空間だ。
 

壁に沿って作られた書架も、緩やかにカーブしている。

▷各時代の「先駆者」を紹介
 常設展示は2種類で、それぞれ月ごとに内容が変わる。現在行われているのは、読書週間に合わせた出雲市立図書館7館の合同企画展示と、児童向けにおやつの物語やレシピを紹介する展示「おやつだいすき」の2種類。

 合同企画では全7館の出雲市立図書館で、それぞれのテーマに沿った本を紹介している。大社図書館は「魁(さきがけ)」をテーマに、時代の先人を紹介する本を展示する。出雲神話に登場する大国主命を描いた絵本や島根ゆかりの作家・小泉八雲を紹介する本など古代から現代まで、歴史に名を残すさまざまな人物を紹介している。

時代を作った人物を紹介する「魁(さきがけ)」コーナー

 ほかの市立図書館6館も、それぞれのテーマで展示している。展示内容は出雲市立図書館のホームページから確認できる。相互に本を取り寄せられるほか、市立図書館で借りた本は市内のどの図書館でも返却できる。

▷ゆったりと開放感のある館内
 大社図書館の特徴の一つが、開放感のある空間。奥の壁一面がガラス張りになっているため、館内に自然光が多く取り入れられ、明るい。また、天井が高く書架は低めになっているため、圧迫感がない。金築泉司書は「書架と書架の間隔も広いため、人とぶつかってしまうことも少ないです。車いすの人も利用しやすいと思います」と話した。確かに、児童書のコーナーだけでなく、全体に棚が低い。本を取り出しやすいだけではなく、通路をゆったりと歩けるのがうれしい。

高い天井と低い書架で、開放感を感じられる。

 充実しているジャンルは児童書。福田茜司書は「年間の貸出冊数を調べたところ、上位6作が絵本でした」と話し、人気の高さがうかがえる。

▷大人にも絵本を
 福田司書は「借りた本が自分に合わないと思ったら返却して別の本を読めばいいし、大人が絵本を借りてもいい。いろいろな本を読んでみて、お気に入りの本を見つけてもらえたらうれしいです」と話した。
絵本は子どもが読むものと思いがちだが、大人になってから読んでも新たな気づきが得られる。ふらっと図書館へ出かけ、思いのままに本を手に取ってみるのもいいかもしれない。


鳥取県立図書館(鳥取市尚徳町)

 鳥取県立図書館は鳥取県立公文書館の隣にあり、地下2階、地上2階建ての建物だ。
 鳥取県では2015年にすべての市町村に図書館が設置された。各館への蔵書貸し出しなど密接に連携を取る姿勢が評価され、2006年には「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー」(NPO法人知的資源イニシアティブ主催)を受賞した。
 県立図書館から遠く離れた地域の人を含め、すべての県民が平等に情報を利用できるようにと、各館から図書の貸し出し希望があれば、翌日から2日後までに届ける。

2階からの眺め。びっしりと本が詰まった書架が整然と並んでいる様子は壮観だった。

▷医療・健康情報の充実ぶりは全国有数
 鳥取県立図書館は「県民に役立ち、地域に貢献する図書館」を目指し、生活に役立つ情報を紹介する展示を充実させている。

解説書や診療ガイドラインが、細かくカテゴリー分けされて並ぶ。

 医療・健康情報のコーナーには、病気の解説書や診療ガイドラインのほか、患者の体験談が記された闘病記が置かれ、病気の予防や治療法、療養生活について知ることができる。特に闘病記は約1,000冊の蔵書があり、「闘病記文庫」の棚にずらりと並んでいる。
 入門書や専門書だけでなく、実際に病気を体験した人の記録にたくさん触れられるという点に、提供する情報の厚みを感じる。
 小林隆志館長は「タイトルだけでは闘病記だと分かりづらいものが多いため、コーナーにまとめ、さらに病気別にカテゴリー分けすることで本を見つけやすくしています」と説明した。

約1000冊が並ぶ「闘病記文庫」

▷データベース「とっとりデジタルコレクション」がスタート
 今年3月には歴史資料や美術品、埋蔵品の写真をオンラインで閲覧できるサービス「とっとりデジタルコレクション」を始めた。鳥取県立図書館のほか、鳥取県立公文書館、埋蔵文化財センター、鳥取県立博物館が所蔵する資料を検索、閲覧できる。調べたいことがあるが、どこで資料を探したらいいのか分からない…という時に役立ちそうだ。

 小林館長は「図書館には信用できる確かな情報が集まっています。“いざというときには図書館“と、頼りにされる場所であれたら」と話し、県民の生活に寄り添った図書館の頼もしさを感じた。


米子市立図書館(米子市中町)

 最後に紹介するのは米子市立図書館。米子市役所のほど近くにある。1階では一般書約11万冊と児童書約4万冊、2階では郷土資料や海外書約2万冊を閲覧できる。
8年前に改装した館内はすっきりと落ち着いた雰囲気。来館者が思い思いに本を選んだり、ゆったりと椅子に座ってページをめくったりしていた。白を基調としているからか、圧迫感がなく広々とした印象だ。

入り口付近に設置されている「新刊コーナー」

▷展示コーナーの多さに驚き
 米子市立図書館の特徴は展示コーナーの多さだ。館内に約15カ所の展示コーナーを設け、各担当者が毎月テーマに沿った本を展示する。11月は食欲の秋にちなみ食べ物に関連した本を集めた「おいしいはなし」、寒暖差による体調不良を防ぐための情報本を紹介する「寒暖差にご注意」など16種類の展示をする。
 ユニークだと感じたのは「タイトル・著者名に1のつく本」のコーナー。11月にちなみ、『長い一日(滝口悠生、講談社)』『オレンジの季節(鯨統一郎、角川書店)』といった、「1のつく本」を集めている。

タイトルや著者名に「1のつく本」を集めたコーナー

 特に力を入れているのは「YA(ヤングアダルト)」の展示。中高生を中心とした若者向けの本を展示するコーナーで、10月はグルメ小説を集めた「グルメな本」、11月は中高生にお薦めの本を集めた「あなたと出会ってほしい本」を紹介している。
 進路を考える上で参考になりそうな職業本、視野を広げられそうなSF小説、手芸の入門書など趣味の幅を広げるのに役立つ本…と、司書が選んだとっておきの本が集まる。
 展示コーナーについて佐藤和子図書課長は「小説、実用書、ビジネス書、歴史書など、ひとつの展示の中に幅広いジャンルの本を置くよう心掛けています。普段は手に取らないような本と出会うきっかけになればうれしいです」と話した。

中高生にお薦めの本を集めたコーナー

▷県立図書館との連携やリクエストサービスで利便性アップ
 館内にない本は鳥取県立図書館から取り寄せたり購入したりすることで、利用者のニーズに応えている。佐藤課長は「鳥取県は東西に長く、米子市から鳥取市までは距離があります。各市町村の図書館を窓口にすることで、県立図書館まで足を運びづらい方にも快適に利用してもらえたら」と話す。
 読みたい本が館内にない場合は窓口でリクエストを受け付ける。すべてのリクエストに応えることはできないが、新たに本を購入し、貸し出し可能になることもあるという。
 細やかな展示で新たな本と出会うきっかけを提供し続ける米子市立図書館。訪れるたびに発見がありそうな、わくわくする図書館だと感じた。

 今回は紹介できなかったが、山陰にはまだ魅力あふれる図書館がある。図書館では本の専門家が、各ジャンルで評価の高い本や話題になっている本を紹介してくれる。季節ごとのテーマを設けた特集も楽しい。最近、図書館に行ってないなぁと思う人は、この秋、図書館の利用を見直してみてはどうだろうか。