マガン(宍道湖グリーンパーク提供)
マガン(宍道湖グリーンパーク提供)

 山陰両県の水辺にさまざまな水鳥が飛来する季節を迎えた。本格的な観察シーズンを前に、出雲市園町の宍道湖グリーンパークで水鳥の魅力や観察の楽しみ方を聞いた。後編では、お薦めの風景や観察時の注意点についてまとめた。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 前編:水鳥観察のシーズン到来! 魅力や観察の楽しみ方を聞いてみた <上>​

▷研究員イチオシ ぜひ見てほしい光景
 ホシザキ野生生物研究所の岩西哲さん(45)さんが「ぜひ実際に見てほしいです」と薦めるのが、マガンの集団飛行。マガンは警戒心が強く、夜の間は敵に襲来されにくい湖の中心部で過ごす。夜が明けると餌場である田んぼに移動し、日が暮れる頃に再び湖へ戻る。移動時は群れをなして飛ぶため、早朝や夕暮れ時にはマガンの群れが一斉に空を飛行する様子を見ることができる。岩西さんによると、お薦めの観察場所は斐伊川河口の周辺。明け方は出雲平野へ、夕方は宍道湖へと、マガンたちが一斉に飛んでいく壮大な光景を楽しめる。岩西さんは「鳴き声も相まって、壮大で美しい様子に感動します。ほかの地域ではなかなか見られない光景です」と話す。明け方の集団飛行は「モーニングフライト」、夕方は「サンセットフライト」と呼ばれている。

朝日をバックに出雲平野へと飛んでいくマガンの群れ(宍道湖グリーンパーク提供)

 マガンは国の天然記念物に指定されていて、編隊を組んで頭上を飛ぶ姿は圧巻という。早起きが苦手な人も、夕方なら見に行ける。この冬、私もぜひチャレンジしたい。もちろん夕方で。

▷豊かな環境は国内でも貴重
 宍道湖や中海に特徴的なのが、大型の水鳥が多く見られること。岩西さんは「初秋の宍道湖では、1日で10種類のカモを観察できることもあります」と話し、種類の豊富さも特徴のようだ。宍道湖や中海ではなぜ、これほど多くの水鳥が見られるのか。岩西さんは「水鳥にとって多様な住環境が整っていることと、餌が豊富なことが主な理由です」と説明する。比較的狭い範囲に、湿地や州、半林といったさまざまな住環境が集結しているため、生き物の多様性が高まる。さらに、斐伊川から栄養分が流れ込むことでプランクトンが増え、それを食べる生物も増加。さらにそれを食べる生物が集まり…と、多様な生物が連鎖的に集まる。岩西さんは「宍道湖の西側には田んぼが多く、ガンやハクチョウの餌となる落ち穂が豊富なのも理由のひとつです」と説明した。

マガン(宍道湖グリーンパーク提供)

 宍道湖と中海はともに、ラムサール条約に登録されている。水鳥や多様な生き物の生息地として世界的に重要な湿地が登録される条約で、10月現在、日本では52箇所が登録されている。
岩西さんは「水鳥観察において、これほど環境が整った場所は全国的にも珍しいです。地元の人々にとっては見慣れた光景かもしれませんが、例えばコハクチョウを間近で見られるなんて、どこでもできることではない。せっかく貴重な環境が身近にあるので、地元の方々にはぜひ、野鳥観察を楽しんでもらいたいです」と話した。

飛ぶため、水面を蹴るように走るコハクチョウ

▷観察時の注意点
 観察する上での注意点がいくつかある。岩西さんは「まず、鳥は警戒心が強く、近づきすぎるとおびえて逃げてしまいます。必要以上に追い回したりおびえさせたりしないよう、野生の生物を観察するときは思いやりの心を忘れずに」と話した。
 鳥だけではなく、人への配慮も必要だ。岩西さんは「例えば田んぼで野鳥観察をするとき、私有地の田んぼに無断で入るのはマナー違反です。好き勝手に車を停めて道をふさがないようにも気をつけましょう」と説明した。鳥にストレスを与えないのはもちろん、観察に夢中になって地元の人に迷惑をかけないよう、注意したい。
 さらに、バードウオッチングを通して考えてもらいたいのが「環境の保全」だと岩西さんは話す。「宍道湖、中海は豊かな環境のおかげで多様な生物が生きている場所です。野鳥観察を通じて豊かな環境の貴重性を感じてもらい、環境保全のために一人一人ができることを考えてもらいたいです」。宍道湖沿岸を歩くと、ポイ捨てされたゴミの多さに驚くといい、観察時に出たゴミは持って帰るなど、一人一人の配慮が豊かな環境を守るのだと訴えた。

オナガガモ(宍道湖グリーンパーク提供)

▷いよいよシーズン到来
 いよいよ本格的に水鳥のシーズンが到来。飛来する鳥が増えると、観察を楽しむチャンスも多くなる。宍道湖グリーンパークでは館内の望遠鏡で野鳥観察が楽しめるほか、双眼鏡も無料で貸し出している。岩西さんは「使い方や観察方法が分からない場合は研究員がレクチャーするので、気軽に野鳥観察を楽しんでもらいたいです」と話した。

ミサゴ(宍道湖グリーンパーク提供)

 取材後、岩西さんに望遠鏡を合わせてもらい、実際に宍道湖の水鳥を観察した。見せてもらったのはミサゴ。水中から伸びた棒の上に乗り、仕留めたらしい魚を食べていた。まるですぐそこにミサゴがいるようでワクワク。自然の中でたくましく生き抜く鳥の姿はかっこいい。これからは道ばたや湖で水鳥を見かけたら、じっくり眺めてみようと思った。