2021年山陰中央新報社地域開発賞 表彰式

社会貢献 6人決意新た  (2021/10/29)

松尾倫男社長(右)から表彰状を受け取る小村正さん=松江市千鳥町、ホテル一畑

 島根県内の各分野で、地域社会の発展に尽くした人を顕彰する山陰中央新報社の地域開発賞表彰式が28日、松江市内のホテルであり、5賞6部門の受賞者が、決意を新たにした。

 受賞者は児島史朗さん(62)=スポーツ賞、出雲市塩冶神前2丁目▽山崎裕二さん(73)=文化賞、同市大社町修理免▽伊藤孝子さん(68)=教育賞、同市東神西町▽小村正さん(74)=産業賞第1部門(農林畜水産)、同市灘分町▽豊島美紀さん(54)=産業賞第2部門(商工・観光・建設)、松江市八束町波入▽金崎孝一さん(76)=社会賞、同市外中原町。

 表彰式で、山陰中央新報社の松尾倫男社長が「コロナ禍で活動に工夫が必要になっただろう」とたたえ、表彰状と副賞を贈った。

 受賞あいさつでは、ホッケーの競技力向上に尽力した児島さんが「今後も島根のお家芸と言い続けてもらえるよう取り組む」と述べ、大社町の歴史や文化を発信する山崎さんは「地味で目立たない活動に光を当ててもらった」と喜んだ。

 出雲市内で読み聞かせ活動を続ける伊藤さんは「本が読める子は健やかに育つと信じてやってきた」と振り返り、女性や若者が参加しやすい集落営農に取り組んだ小村さんは「これからも島根の農業に力を添えたい」と誓った。

 女性の感性を生かし、大根島を盛り上げる豊島さんは「変わっていく島の様子に突き動かされた」ときっかけを話し、男女の縁結びを支援する金崎さんは「これまでに結んだ縁は850人以上。これからも良縁を育みたい」と意気込んだ。

2021年山陰中央新報社地域開発賞 受賞者の横顔

 山陰中央新報社が、各分野で島根県の地域社会の発展に貢献している人を顕彰する「2021年山陰中央新報社地域開発賞」の表彰式が28日、松江市千鳥町のホテル一畑である。表彰に合わせて、スポーツ▽文化▽教育▽産業(第1部門・農林畜水産、第2部門・商工・観光・建設)▽社会-の各賞を受賞する6人の功績と横顔を紹介する。

第65回スポーツ賞

生徒に指導する児島史朗さん=奥出雲町稲原、町立横田中学校

島根県ホッケー協会副理事長
  児島 史朗さん(62)

     =出雲市塩冶神前2丁目=

奥出雲の競技力高める

 約40年にわたり、島根県奥出雲町が誇るホッケーの競技力向上に力を注ぎ、「ホッケーの町」を築き上げた功労者の一人だ。勝つことに情熱を傾けた一方、「生徒たちにホッケーを通じて将来設計ができるようになってほしい」という願いを持ちながら指導を続けてきた。教員退職後も週6回、自宅がある出雲市から片道約1時間をかけ、現在指導している町立横田中学校へ通っている。

 山口県柳井市出身。進学しした日本体育大学で、先輩に勧められてホッケーを始めた。島根県で開催された「くにびき国体」が縁で1982年に教員として採用され横田中学校へ赴任した。ホッケー部の顧問を務め、自身もプレーヤーとして成年男子の部で出場した。

 一番の思い出は、87年に旧横田町で開かれた第17回全日本中学校ホッケー選手権大会での指導者としての優勝だ。  「地元を盛り上げるには勝つしかない」と使命感を持って臨み、11人制の男子と6人制の女子を優勝に導いた。翌年も男子は11人制で頂点に輝き、連覇を達成。横田の名を全国へ知らしめた。

 強化が実った背景にはたゆまぬ努力があった。84年ごろから滋賀県や奈良県などのホッケー先進県に練習試合に出向き、相手の監督に指導のノウハウを積極的に聞いた。強豪校の選手との差が「腰の位置の低さ」だと見極め、走れる選手を育てるために、下半身強化に注力した。

 2004年のアテネから12年のロンドンまで3大会連続で五輪に出場し、主将も務めた山本由佳理さんを育てたほか、ゴールキーパーとして東京五輪代表候補になった景山恵選手は、中学校でソフトボール部に所属していたが、高い身体能力などの素質を見抜き、ホッケーの世界へ導いた。

 退職後もますます盛んだ。「あと10年ぐらいはホッケー競技の発展に携わりたい」。30年には、指導者人生の原点と言える国民スポーツ大会の地元開催を控え「ホッケーを通して、謙虚さや周りへの感謝の気持ちを伝えていきたい」と意気込む。

第60回文化賞

発行予定の書籍の原稿を編集する山崎裕二さん=出雲市大社町杵築東、いづも財団

いづも財団事務局長
  山崎 裕二さん(73)

     =出雲市大社町修理免=

大社史研究「語り部」も

 地域に残る古文書を読み込み、地元の出雲市大社町の歴史を解き明かすことに力を注いだ。積み重ねた研究成果を基に、次世代への「語り部」の役も担う。

 子どものころから本を読むことが好きで、歴史研究は大学入学後に本格的に打ち込み始めた。3年時に歴史書を読み込むゼミを選択し、通史をなぞるだけでなく、一つの時代や出来事について、多様な見方をしようとする学びの在り方に知的興奮を覚えた。

 卒業後は教員として子どもたちに歴史の面白さを伝えようと意欲を燃やした。授業のために郷土史を研究し、他の教員と共に島根の歴史や偉人を紹介する教材を作った。

 1987年に、大社町(当時)の歴史をまとめる「大社町史」の編纂(へんさん)への協力を求められて参加した。出雲大社のお膝元であり、身が引き締まる思いで昼は学校の授業、夜は郷土資料の読解に明け暮れた。

 大社町史には編纂委員として20年以上携わり、主に中世から近世に関して編集執筆に力を注ぎ、88年の論文「中世都市杵築の性格」では、独自の知見を発表した。

 大社地域が出雲大社を中心とする宗教的な都市であっただけでなく、物流が盛んな商業地でもあったことを明らかにした。まさに、一つの時代や地域を多角的に検討する自身の研究スタイルの真骨頂と言える成果を挙げた。

 「郷土研究の成果は、地元の人々に返すことが大事」との思いから、教員退職後の2009年からは県内外で講演し、出雲の歴史文化を分かりやすく紹介している。11年から、出雲文化をテーマにした研究者による公開講座や、文化財の保存に取り組む「いづも財団」に所属。事務局長として、研究者らによる公開講座や、シンポジウムを基にした「いづも財団叢書(そうしょ)」シリーズの刊行など、裏方でも多忙な日々を送る。

 「大社のあちこちに歴史的なエピソードがある。そのような来歴を知ることから郷土を愛することが始まる」と山崎さん。きょうも、門前町を忙しく立ち回る。

第55回教育賞

絵本の読み聞かせをする伊藤孝子さん=出雲市大津町、出雲中央図書館

しまね子どもの読書等推進の会会長
  伊藤 孝子さん(68)

     =出雲市東神西町=

子どもと本の橋渡し役

 乳幼児から小中学生を対象にした読み聞かせやブックトークなどのボランティアとして、子どもたちの読書活動に携わる。「子どもに本を読むと私まで幸せになる。役得です」と笑顔を見せる。

 1997年から2004年まで出雲市立荒木小学校に在職中、司書教諭の資格を取った。文部科学省が「子ども読書年」を制定し、学校図書館に光が当たり始めた時期と重なる。

 子どもたちは、塾やスポーツ少年団での活動で忙しいし、本よりゲームが好きな子も多い。「本を読む、言葉に触れる経験をどうしたら育めるだろうか」と考え、学校図書館に関する講演などを聞きに行き、自ら学びを深めた。

 04年3月、親の介護のために51歳で早期退職。介護の傍ら、読書ボランティアをしようと決めていた。退職後間もなく、週末に乳幼児に読み聞かせをする、出雲中央図書館のボランティア団体「おはなしさんぽ」に入会した。

 本の内容を自分の言葉で語る「ストーリーテリング」の養成講座を受け、1年間、一緒に受講した約10人に「せっかくなのでグループをつくって活動しませんか」と声を掛けてグループ「おはなしだんだん」を立ち上げた。

 活動を始めた直後、小学2年生のクラスで本を読んだ時のこと。話の途中で1人の男児が教室に入ってきたが、男児は怒り、険しい表情をしていた。それでも本を読み進め、すると男児の表情がだんだん優しくなり、読み終わった後には本の内容を絵に描いて渡してくれた。「これが本の力だな」と実感した。

 現在は、島根県内全体の読書ボランティアの育成にも力を注ぐ。

 好きな絵本は『ルピナスさん』。主人公が村のあちこちにまいたルピナスの種が花を咲かせ、世の中を美しくし、人々を幸せにするというストーリー。「これだ。私が活動を通じて種をまくことで子どもと本をつなげたらいいな」。子どもが笑顔に、そして生きる力となる本に出合えるよう「種まき」を続ける。

第55回産業賞・第一部門(農林畜・水産)

水田で稲穂の実り具合を確かめる小村正さん=出雲市灘分町

農事組合法人まめなかファーム新田後理事
  小村 正さん(74)

     =出雲市灘分町=

加工部や集落営農指導

 出雲平野の北部、出雲市灘分町の水田に風が吹き抜けると、成長した稲穂がサラサラと音を鳴らす。「葉の受光がいい。今年の出来は良い」と収穫を楽しみにする。

 約30年勤めたJAを退職後の2004年、島根県で第1号となる特定農業団体「新田後営農組合」を設立した。米価が下がる中、個人ではコンバインといった機械の維持負担が大きいため、共同利用で効率化を図った。

 「女性の交流が生まれると地域活性化拠点ができる」との思いで、1人年間千円で家族も加入できる「1戸複数組合員制度」を導入した。加工部を新設し、キムチなどの漬物を作って販売。6次産業活性化の先駆けとなった。

 米や野菜の営農指導に携わったJA時代、転作作物として産地化に成功した「かあちゃんブロッコリー」の仕掛け人だ。女性が栽培に積極的に関わり、収入増につなげていた体験が、加工部の取り組みにも生きた。

 12年に法人化した「農事組合法人まめなかファーム新田後」は現在、20代から70代までの27戸・56人で構成。経営する約40ヘクタールのうち、8割強の33ヘクタールを水稲が占め、きぬむすめを中心に栽培する。

 集落営農同士が交流し、発展を目指す「JAしまね出雲集落営農組織連絡協議会」の役員を10年務め、このうち6年は会長として集落営農のノウハウや魅力を発信した。

 まめなかファーム新田後では、主力として将来を担う30代から60代までを指導していくのが現在の役目。「聞く耳を持って信頼し、やらせてみること」と心掛ける。口出しせずに、できないところをこっそりとフォローするのが役割だと強調する。

 小学生の時に父親を亡くして、残された家族で担った農作業を助けてくれたのが地域の大人たちだった。将来は同じように助けてあげられる存在になろうと誓った。

 「地域づくりや地域活性化は、人と人の触れ合い、助け合いから育つ」と信じる。時代が変わっても、この精神が引き継がれることを、一心に願っている。

第55回産業賞第二部門(商工鉱・観光・建設)

商品を手に来客の対応をする豊島美紀さん=松江市八束町波入、島採れマーケット

ふぁーむ大根島社長
 豊島 美紀さん(54)

     =松江市八束町波入=

大根島産品の魅力発信

 中海に浮かぶ大根島(松江市八束町)を「美と健康と癒やしの島」と発信する。耕作放棄地を活用した地元産品の開発や販売に取り組み「八束に住む人の生活水準が上がり、幸せになってほしい」と願う。

 松江市内の高校を卒業した後、メーカー勤務などを経て1993年、八束町で肥料や農業資材を扱う店舗を経営する家に嫁いだ。

 10年ほど前にふとしたきっかけから「島の風景が変わった」と意識した。耕作放棄地が増え、島のシンボルと言える朝鮮ニンジンを栽培するための畑のわらぶき屋根が少なくなっていると感じて、島の活気を取り戻したいとの気持ちがふつふつと湧いた。

 2015年に、イモやゴボウなどの栽培に挑戦したがうまくいかなかった。そんな中で知り合った大阪のパクチー専門店の関係者から「買い取るからパクチーを育ててみないか」と提案され、島に抱いてきたイメージに合うと考えて露地栽培に挑んだ。

 軌道に乗った後には、高齢の農家にも栽培を推奨。さらに、島内で採れた規格外のダイコンやシイタケなどを活用した商品を開発し、2018年に立ち上げた株式会社「ふぁーむ大根島」で農作物を買い取り、販売を始めた。

 20年11月には肥料店横の倉庫で「島採れマーケット」を開店。ふぁーむ大根島の商品や、町内で採れた作物、日用雑貨を扱っている。店内は地域住民の憩いの場にもなっている。

 島根の中でも時間の流れがゆったりしているという島の魅力を知ってもらおうと、島内の女性グループ「マカナ大根島」を立ち上げイベントを開いたり、SNS(会員制交流サイト)での発信にも力を入れたりしている。

 大胆な試みも始めた。耕作放棄地をドッグランとして開放し、月1回の愛犬と家族向けのイベントのほか、高齢者向けの移動販売や野菜の島外への定期配送も計画。新型コロナウイルスの影響もものともせず、「魅力いっぱいの八束にもっと来てもらえるよう、島の認知度を上げていきたい」と元気いっぱいだ。

第55回社会賞

これまでの活動を振り返る金崎孝一さん=松江市殿町、しまね縁結びサポートセンター

しまね縁結びはぴこ会会長
  金崎 孝一さん(76)

     =松江市外中原町=

結婚望む男女の縁結ぶ

 島根県内を中心に、結婚を望む男女の相談を受け、縁結びを応援するボランティア団体「島根はっぴぃこーでぃねーたー」(通称・はぴこ)の一員として、発足した2007年から活動を続ける。はぴこ同士の交流グループ「しまね縁結びはぴこ会」の会長を務めるなど、活動メンバーを支える役目を担う。

 少子化対策に寄与したいとの思いから「地域の役に立ちたい」と退職後はぴこに応募した。家族や知人と鍋を囲む場を準備する「鍋奉行」のように「世話をして人に喜んでもらえることが好きだ」という思いが応募の決め手になった。

 相談に来る人の緊張をほぐそうと、まずは「ようこそいらっしゃいました」という声掛けを欠かさない。お見合いまでたどり着いたときには、互いがまた会いたいと思えるような雰囲気をつくる。

 成果はすぐには出ない。交際となっても、通常、結婚までは半年から1年ほどかかる。地道な活動が続くだけに「結婚が決まったという報告があるとうれしい」と目を細める。これまで約1万3千件の相談を受け、約1万4千件の出会いの場を設けた。活動が実り、交際に至ったのは約4千件。このうち853人が結婚した。

 「現場主義」をモットーに、はぴこの相談にも乗る。メンバーが活動しやすいように意見をまとめ、改善案を提案してきた。  「楽しく、にぎやかに、親切に」とアドバイスを続け、68人でスタートしたはぴこは264人に増えた。県内11カ所にはぴこ会があり、自発的に活動する。

 はぴこの拠点として、16年に県が設置した「しまね縁結びサポートセンター」の副理事長も務める。センターにはコンピューターマッチングシステムが導入され、相談支援が充実。今後は、豊かな自然や歴史ある島根県と穏やかな県民性を生かし「幸福度ナンバー・ワンしまね」をキャッチーフレーズに、「島根で結婚し、子育てをしてもらえるように、結婚を希望するみなさんに呼び掛けていきたい」との展望を描く。

2021年山陰中央新報社地域開発賞 選考委員(順不同、敬称略)

[第66回 スポーツ賞]
島根大学名誉教授 斎藤 重徳
島根県環境生活部スポーツ振興課長 佐藤 正範
島根県体育協会専務理事 安井 克久
島根県スポーツ推進委員協議会会長 久家  彰
島根県高校体育連盟会長 宇津  誠
島根県中学校体育連盟会長 安達 正治
[第60回 文化賞]
島根大学法文学部長 丸橋 充拓
島根県教育委員会教育長 野津 建二
島根県市町村教育委員会連合会会長 杉谷  学
島根県環境生活部長 竹内 俊勝
NHK松江放送局長 吉光 賢之
TSK山陰中央テレビ代表取締役社長 田部長右衛門
[第55回教育賞]
島根大学教育学部長 加藤 寿朗
島根県教育委員会教育長 野津 建二
島根県市町村教育委員会連合会会長 杉谷  学
島根県高校PTA連合会会長 大屋 光宏
島根県PTA連合会会長 原  完次
島根県高校文化連盟会長 常松  徹
[第55回産業賞]
島根大学生物資源科学部長 川向  誠
島根県農林水産部長 西村 秀樹
島根県商工労働部長 田中 麻里
島根県商工会議所連合会会頭 田部長右衛門
島根県商工会連合会会長 高橋日出男
島根県農業協同組合中央会会長 石川 寿樹
漁業協同組合JFしまね会長 岸   宏
[第55回社会賞]
島根大学名誉教授 多々納道子
島根県教育委員会教育長 野津 建二
島根県環境生活部長 竹内 俊勝
島根県健康福祉部長 小村 浩二
島根県警察本部長 池田  宏
島根県社会福祉協議会会長 小林 淳一
島根県連合婦人会会長 野々内さとみ