自宅療養中の新型コロナ患者をオンラインで診療する「山下診療所大塚」の山下巌院長=27日、東京都豊島区
自宅療養中の新型コロナ患者をオンラインで診療する「山下診療所大塚」の山下巌院長=27日、東京都豊島区
NPO法人「TENOHASI」の食事支援に列をなす人たち=25日、東京都豊島区
NPO法人「TENOHASI」の食事支援に列をなす人たち=25日、東京都豊島区
自宅療養中の新型コロナ患者をオンラインで診療する「山下診療所大塚」の山下巌院長=27日、東京都豊島区
NPO法人「TENOHASI」の食事支援に列をなす人たち=25日、東京都豊島区

 新型コロナウイルスの感染拡大で今夏、医療は危機的状況に陥り、失業者も増加している。「新しいリーダーは自分の言葉で国民に発信を」「苦しむ人を助けて」。自民党新総裁に選ばれ、次の首相就任が確実視される岸田文雄前政調会長(64)に対して、コロナ禍で厳しい対応を迫られる医療現場や生活困窮者から切実な声が上がった。

 「後遺症が長引かないよう検査を予定しましょう」。総裁選が終盤を迎えた27日、東京都豊島区の「山下診療所大塚」では、山下巌院長(57)がオンライン診療で、せきの苦しさを訴える自宅療養中の新型コロナ患者(56)に語り掛けていた。

 有床診療所ではないため、新型コロナ患者を入院させることはできない。だが昨春以降「やれることをやらなければ」との思いで、発熱外来を設け、オンライン診療も続けている。重症化のリスクが高い時は他の医療機関と調整し、入院につなげてきた。

 昨年初めて緊急事態宣言が出た際は、受診控えで診療所を訪れる患者が1カ月で最大4割減り、一時は閉鎖も頭をよぎった。退職したスタッフもおり、厳しい状況だったが「医療崩壊を防ぐため、最前線に立ってきた」との自負がある。

 「国が一丸となってコロナと闘わないといけないが、菅義偉首相は一体感をプロデュースできなかった」とみる。新たなリーダーには「自分の言葉で国民に発信し、タブーをつくらず新しい対策にも乗り出してほしい」と思いを寄せた。

 東京・池袋。繁華街の一角では25日、生活困窮者が無料の炊き出しに長い列をつくった。

 支援を行うNPO法人「TENOHASI」によると、この日は過去10年で最多の400食分を用意したが、すぐ底を突いた。清野賢司事務局長は「コロナ前は200食でも多かったが…。次は何食必要か見当もつかない」と嘆いた。

 支援を受けた中野区の男性(31)は、東北地方のレジャー施設でアルバイトをしていた昨年、営業自粛で仕事を失った。現在は建設会社の契約社員となったが、節約して貯金するため、たまに訪れる。「緊急事態宣言のたびに困窮者が増えた。次の首相は本当に苦しい人に手をさしのべてほしい」と訴えた。