災害のたびに被災地を悩ませる大量のごみ(廃棄物)問題。近年の被災自治体では、初期からの分別徹底などにより、早期処理やコスト削減を図った工夫例もある。経験を積んだ職員の人材バンクの運用も始まった。
「これは金属かな」「家電はここに」。10月、宮城県東松島市が実施した災害ごみの処理研修。若手職員ら15人が家具や布団、電化製品を災害ごみに見立て、仮置き場での配置などを考えた。
被災者雇用
2011年の東日本大震災で同市では、普段の処理量の110年分となる約110万トンの災害ごみが発生。経験を共有しようと、担当だった鈴木雄一さん(47)を講師として研修を続けている。
10年前の独自の取り組みは「東松島方式」と呼ばれる。柱の一つが初期の分別で、仮置き場に持ち込む被災者や業者に協力を呼び掛けた。「最初から分けたことで大半が再利用でき、費用も抑えられた」と鈴木さん。
もう一つの柱が、失業した被災者ら約800人の雇用。津波のヘドロに混じったごみや、14種類に分別された木材などのごみを、19種類に細分化する作業に従事した。
コンクリートの破片は道路復旧などに活用、津波堆積物の土は堤防の役割を果たす盛り土に。金属類は種類ごとに分け、数億円で売却した。
独自の工夫は、合併前の03年、地震で約9万5千トンのごみと格闘した経験が大きい。「最初の分別が大ざっぱで処理費用がかさんだ苦い教訓を生かした」と鈴木さん。
05年に協定を結んだ市建設業協会と大震災では連携。加盟企業の得意分野や所有する重機に応じ、撤去や収集運搬、分別などを委託したこともコスト減につながった。
恩返しに
今年7月の土石流で被災した静岡県熱海市。千葉県館山市職員の佐野能弘さん(52)と半沢大さん(45)が赴き、ごみ処理の専属チーム創設などを提案した。
2人は環境省が今年から運用を始めた災害廃棄物処理支援員制度で派遣された。経験ある自治体職員の人材バンクだ。
館山市は19年の台風で被災。15年に水害に遭った茨城県常総市などから職員の応援を受けた。「推計発生量の計算や処理費の目安などマニュアルでは分からないことがある。困った時になんでも聞けた」と佐野さん。恩返しの気持ちも込めて支援員に登録した。
役割分担
「ごみがとんでもないことになっている」。19年の台風19号の被災直後、対応に追われていた長野県庁で、NPOのスタッフが伝えた。仮置き場ではない長野市の公園などに災害ごみが持ち込まれ、高く積まれていた。
長野県は(1)昼間はNPOやボランティアが民家や敷地からごみを出し、主に軽トラックでこの公園などに移動(2)夜間に自衛隊が大型トラックで仮置き場まで移動―などと決め、処理を急いだ。
県危機管理部火山防災幹で、この問題に携わった古越武彦さん(56)は「県の地域防災計画でNPOとの連携を明記していたことが大きい。私有地の民家には公的機関の自衛隊は入らない原則を守りながら、役割分担ができた」と振り返った。