自民党前職の細田博之氏は東京都千代田区の自身が率いる派閥の事務所で午後8時ごろ、当選確実の一報を受けた。運輸相などを歴任した父の故吉蔵元衆院議員を超える11回目の当選を果たし、支持者が集まる地元の報告会場とつないだ電話で「異例の選挙だったが、本当にお世話になった」と感謝の言葉を口にした。
全国的に野党共闘が進み、多くの選挙区で与党候補と野党統一候補がせめぎ合った衆院選。党最大派閥の会長として激戦区の応援に入り、地元で遊説できたのは5日間に限られた。
支える地方議員や企業・団体の数は他候補を圧倒し、知名度も十分だったとはいえ、順風満帆なわけではなかった。党重鎮で、新型コロナウイルス対応を巡る政権批判を正面から受け、街頭では高齢による衰えを気遣う声も相次いだ。
さらに、中国電力島根原発2号機(松江市)の早期再稼働の必要性を積極的に訴えたことで経済界の賛同を得た半面、事故リスクに不安を抱く支持者の離反につながる恐れもあった。
懸念を抱きながらの戦いではあったが、政策実現力を背景にした自信は揺るがなかった。中山間地域では人口減少地域の担い手を確保する新制度「特定地域づくり事業協同組合」の法制化や、手厚い財政支援がある過疎法の改正を主導した実績を強調。新型コロナの影響で落ち込んだ観光業の立て直しも訴えた。
当選が決まると、松江市内のホテルに集まった約150人の支持者が万歳三唱。選挙区内の首長も姿を見せ、丸山達也知事は「国政、国会のど真ん中で一層ご活躍されることを祈念する」とあいさつした。
共に衆院議員として活動した竹下亘氏が9月に亡くなり、地方の声を国政に届けるベテランの責任は一層重くなる。
父の地盤を引き継ぎ、45歳で初当選してから30年余り。今年4月に喜寿を迎えたが「コロナや人口減少、水害、農業の対策など、地元のため、国のためにさらに頑張りたい」と決意を新たにした。 (片山大輔)