思うように体を動かせないALS(筋萎縮性側索硬化症)の入院患者が新型コロナウイルス禍に伴う面会制限で家族らの介助を受けにくくなったことが、日本ALS協会島根県支部(景山敬二支部長、28人)の聞き取り調査で分かった。在宅患者もコロナ禍で顕在化した在宅医療・介護の人員不足に不安を抱えるなど、深刻な実態が浮き彫りとなった。 (多賀芳文)

 ALSは、全身の筋肉が徐々に萎縮し体が動かせなくなる難病。県内の患者は現在81人(2020年9月末)で、うち長期入院が33人、在宅療養が48人いる。

 調査は10月上旬に松江、出雲両市の患者や家族8人に行った。結果報告では、入院患者と家族は2020年春以降「隔絶状態」と説明。ある患者は20年春以降に許された面会が月に1回で、時間は現在1回5分のみ。患者の夫は「妻と十分に話ができない」と嘆き、手紙で意思疎通しているという。

 県支部の担当者によると、まひが進んだ患者は寝返りや室温調整といった身の回りの世話、文字盤を使う意思疎通などに細かなケアが必要。通常は家族やヘルパーが担うが、できない状態に陥り「患者は自由がきかない上に、家族にも会えないという大変な不安や苦痛がある」と指摘する。

 在宅患者の不安も大きい。コロナ禍では他の病気の患者も在宅療養を選ぶ傾向があり、在宅医療や介護サービスの人手不足が慢性化。訪問支援が欠かせないALS患者にとって、変わらずケアを受け続けられるか、不安が強いという。

 体が動くうちに、と計画した活動がコロナ禍でことごとくできなくなった患者もいるといい「ALS患者にとって『時間が過ぎる』意味は大きい」と訴える。

 景山支部長は、面会制限は致し方のない措置だとしながらも「QOL(生活の質)低下は目に見えるほど明らか。ワクチン接種が進んだ今、面会規制の緩和を切に望む」と患者への理解と課題の解消を訴える。