新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が急拡大して日本でも感染者が初確認され、政府は緊急避難的に全世界を対象に外国人の新規入国を禁止した。

 世界保健機関(WHO)は「世界的に拡散する可能性が高く、危険性は非常に高い」としている。最悪の事態を想定し、素早い水際対策強化に加え、1日スタートのワクチン3回目接種計画の強化も検討すべきだ。

 オミクロン株は南アフリカで確認されてから短期間で欧州諸国を中心に拡大。国内で初確認される前、岸田文雄首相は「情報がある程度明らかになるまでの臨時、異例の措置」として入国禁止に踏み切った。

 「慎重すぎるという批判は全て負う」と経済界から反発が出るのを覚悟の上で決めた首相の判断は、経済優先で後手に回り批判された前政権の二の舞いを避ける狙いがある。だとしても、国民の命と健康を守るには妥当だ。首相が重ねて強調する「最悪の事態を想定した危機管理」とは、結果的に杞憂(きゆう)に終わるとしても可能な手は尽くすことであると再確認したい。

 オミクロン株は、香港のホテルで隔離中の人が医療用マスクを着けずにドアを開けたことで、廊下を隔てた向かいの部屋の人に空気感染したとも伝えられる。強い感染力で南アフリカの一部地域では従来株から急激に置き換わっている。感染が再拡大していた欧州諸国にオミクロン株が広がれば、さらなる波及を予想せざるを得ない。

 苦戦を招いたデルタ株との闘いを想起するならば、既に国内の一部では感染拡大が始まっているとの前提に立った対策が必要な段階と見るべきだ。オミクロン株は、従来のワクチン接種で作られる抗体から逃れやすく、治療薬が効きにくいことも懸念される。同株に対応した修正ワクチン、治療薬の開発を急がなければならない。

 一方国内では、既存ワクチンの3回目接種が医療従事者を対象にスタート。年明け以降に65歳以上の高齢者らに広げる。2回目接種から原則8カ月以上の間隔を置くのが政府の今の方針だ。既存ワクチンがオミクロン株の感染、重症化防止にどこまで効くか検証を急ぐとともに、6カ月に短縮できる対象を必要に応じて拡大すべきだ。

 日本に住む人々を守るためには、これらの対策の推進が欠かせない。しかし自国優先の「一国平和主義」を世界各国が追求すれば、人類がコロナ禍を克服する日が遠のく懸念が否定できない。

 南アフリカや周辺国は、各国が入国を禁止したことに「不当な差別だ」と反発する。厳しい渡航制限はこれら諸国を経済的な窮地に陥れるためだ。南アは既に失業率が30%超に悪化しており、国内でさらなる行動制限強化を見送るという。

 こうした状況で、豊かな国々がワクチンの追加接種を一層進めることは、途上国へのワクチン普及が滞ることと裏腹の関係だ。ワクチン格差の拡大で途上国をなおも感染リスクにさらし続ければ、オミクロン株に限らず、さらなる変異株の出現を呼び、世界に広がる危険性が残る。

 有効なワクチンの普及をはじめとしてコロナ対策はグローバルにあまねく広がらなければ結局かつての日常は戻らない。世界を守ることが巡り巡って日本を守るという観点も忘れてはならない。