マスキングテープを貼り合わせて描いたサンタクロース
マスキングテープを貼り合わせて描いたサンタクロース

 クリスマスが近づき、街やショッピングセンターでは華やかな飾りが増えてきた。クリスマス気分を高めるのにぴったりなのが、クリスマスカード。華やかに彩られたポストカードは、送るのももらうのも楽しい。マスキングテープを細かく貼り合わせた緻密な作品を作る「マスキングテープアーティスト」の渡部真理子さん(46)=松江市宍道町宍道=に、クリスマスにぴったりのポストカードの作り方を教えてもらった。(Sデジ編集部・宍道香穂)

 

 渡部さんは、コロナ禍の2020年5月、外出自粛ムードで自宅から出ることができない中、インスタグラムでマスキングテープを用いたアート作品の動画を見た。「これなら自分にもできるかも」と、見よう見まねで制作を始め、これまでに約100点の作品を手掛けた。

渡部さんがマスキングテープで作ったトラ。ふさふさとした毛並みや瞳に映った光まで細かく表現されている。

 動物をモチーフにした作品は代表作で、ふさふさとした毛並みや立体感、瞳の光など細部までこだわって作られているのが分かる。ピンセットでもつかむのが難しいほど小さいテープを使ったり、異なる色のテープを重ねて奥行を表現したりと、緻密に作られた作品はまるで写真のようにリアルだ。
 作品を見た人からは「リアル!」「作品を見た瞬間、ワアーっと声が出ました」といった賞賛の声が届いている。

渡部さんがマスキングテープで作ったリス。柔らかな色合いや緻密に貼り重ねられたマスキングテープが美しい。

 渡部さんのように大作を作るのは難しいが、私も何か作ってみたい! と、初心者が作りやすいデザインを考案してもらった。作り方を教えてもらいながら、クリスマスにぴったりな、サンタクロースのポストカード作りに挑戦した。

クリスマスにぴったり!サンタさんポストカードの作り方
①    赤、白、ベージュ、オレンジ、ピンクのマスキングテープを用意する。
②    台紙に赤のテープを貼り、服を作る。
③    ②の上につなげるように、ベージュのテープで顔を作る。
④    帽子を作る。③の上に、赤のテープを上が短くなるように貼る。
⑤    赤のテープを細かく(約1センチ角)ちぎり、④の輪郭を整えるように貼る。
⑥    ひげを作る。白いテープを約1センチ角にちぎり、好みの形に貼りつなげる。ピンセットを使うと手元が見えて貼りやすい。
⑦    白いテープを細かくちぎり、帽子の頂点にファーを作る。
⑧    白いテープを細長くちぎり、帽子の下部のファーを作る。
⑨    好みの色のテープで、鼻とほおの赤みを作る。
⑩    マジックで目を描き、完成!

ふさふさのひげが印象的なサンタクロースが完成した。

 ちぎって貼ってと、繰り返しているうちに徐々にサンタができていくのが楽しい。ところどころ重ねて貼ることで、色に濃淡が出たり、台紙や下に貼ったテープの色が透けて見えたりしてきれいだ。
 30分ほどかかったが、ふさふさのひげを蓄えたサンタ(?)が無事、完成した。部屋に飾ったり、知人や家族にクリスマスカードとして送ったりと、クリスマス気分を盛り上げてくれそう。

 渡部さんは「貼る場所を間違えたり、イメージと違う形になったりしても貼りなおすことができるのがマスキングテープの良さです。マスキングテープや台紙は100円ショップなどで手軽に購入できるため、気軽に楽しんでもらえたら」と話す。興味を持ったらすぐに材料をそろえられ、手軽に制作できるのはうれしい。

マスキングテープを使ったアートを手掛ける渡部真理子さん(46)

 もともと絵を描くことが好きだった渡部さんは、マスキングテープでアート作品ができることに驚いたという。「下地を描いた後にテープを貼っていくと、想像もしてなかった作品が浮かび上がってくるのが面白いです」と、魅力を説明した。使用するマスキングテープは文具店や100円ショップ、通販サイトで購入している。同じ色でも、メーカーによって使用感や透け感が異なるのが面白いという。

渡部さんが集めているマスキングテープ。微妙な色の違いや質感によって使い分けている。

 絵本の1シーンを再現した作品や動物、人物、食べ物などを描いた作品をインスタグラムに投稿すると次第に注目が集まり、オンライン展示会や個展に出品しないかと声を掛けられるようになった。

渡部さんがマスキングテープで作ったキャベツ。テープを貼り重ねて立体感を演出している。

 現在は事務員として勤務する傍ら、ショッピングセンターやギャラリーで作品を展示し、マスキングテープアートの魅力や楽しさを広めている。渡部さんは「今後はさらにいろいろな表現方法を身に付け、偶然通りかかった人が足を止めるような作品を作りたいです」と、さらなるレベルアップを目指している。

 絵具や筆など画材が必要なアートと比べ、マスキングテープアートは材料をそろえやすい。手が汚れず、貼り間違えてもはがして貼りなおすことができるため、制作も手軽にできる。水彩や油絵とはまた違う立体感があり、どこか優しい雰囲気のある作品に仕上がるのが魅力だ。新たな趣味として、今後も何か作ってみたいと思った。