出処進退は政治家にとって最もデリケートな問題だ。ましてや党要職、閣僚を歴任し、50人以上の派閥を率いる重鎮となればなおさら。竹下亘氏が引退するかもしれない-。端緒の情報をつかんだのは、7月に表明に至る少し前のことだった。

 確かに2カ月近く国会で姿を見ていなかった。食道がんを患い、来る選挙に向け体調を整える必要があるとはいえ違和感があった。「コロナを避けるためだわね」。それまで周辺から聞こえていた答えに納得していたのは、記者自身どこか「次も出るだろう」と思っていたからだ。

 真偽を確かめる取材のハードルは極めて高かった。慎重に進めながらも、...