張子虎を前に歓談される天皇ご一家=2021年12月21日、皇居・御所(宮内庁提供)
張子虎を前に歓談される天皇ご一家=2021年12月21日、皇居・御所(宮内庁提供)

 出雲地方に伝わる民芸品「張子虎(はりこのとら)」が、天皇ご一家の新年のあいさつとして公開された写真に登場した。干支(えと)の「寅(とら)」にちなんだもので、出雲の家々に飾られるなじみ深い品が選ばれたことに、関係者からは喜びの声が上がった。

 張子虎は和紙を重ね張りして成形。首がゆらゆらと動き、玄関などに飾ると家を守るとされる。宮内庁によると写真の虎は高松宮家ゆかりの品で、所蔵の経緯や年代は不明という。

 張子虎は、高橋張子虎本舗(出雲市)が1877年から制作していた品が全国的に有名で、1982年に県ふるさと伝統工芸品に指定。同本舗は2009年に後継が途絶えたため、廃業した。

 伝統工芸品の審査員を長年務めた松江市北堀町の平本映子さん(83)は、同本舗6代目の故高橋孝市さんと交流があり、写真の虎は同本舗で作られた可能性が高いと指摘。「見る限り間違いないと思う。島根で物作りに携わる全員にとって元気が出るニュースで、高橋さんも喜んでいるのではないか」と目を細めた。

 同本舗の張子虎を展示する出雲文化伝承館(出雲市浜町)の吉田美智子館長(66)は「出雲で脈々と受け継がれた虎を皇室に選んでいただき、大変光栄だ」と喜んだ。

  (吉野仁士)