欧州連合(EU)欧州委員会は、原子力発電と天然ガスを、地球温暖化対策に資する投資先だと認める方針を示した。ドイツなど脱原発を進める加盟国は反発しているが、今月中に最終決定される可能性が高い。加盟国の過半数が承認すれば2023年に法制化される見通しだ。

 だが、あくまでも「再生可能エネルギーを中心とする将来への過渡的手段としての役割がある」との位置付けだ。EUなどが目指す「50年の温室効果排出ゼロ社会」を実現する上で、巨額のコストと長期間の工期が必要な原子力に、多大な期待と投資を向けることはリスクが大きい。

 今回の方針は、欧州委が脱炭素社会や持続可能な社会の実現に貢献する投資先を分類する「タクソノミー」と呼ばれる制度で、投資家へのガイダンスとしての役割を持つ。欧州委は、当初は除外していた原発を一定の条件下で対象に追加する案を加盟国に示した。

 EU加盟27カ国の原発政策はさまざまだ。ドイツは再生可能エネルギーの拡大によって脱原発と脱石炭の両方を進めている。東京電力福島第1原発事故後、スイスやイタリアも脱原発を決定、ベルギーも昨年末、25年までに国内の原発7基すべてを廃炉にするという03年の決定を再確認した。

 一方で、英国やフランス、フィンランドなどは電力の脱炭素化のため原発を重視する政策を掲げており、これが今回の方針転換に影響したとみられる。

 日本国内の原発推進派からは歓迎の声が聞かれるが、タクソノミーの変更で、欧州で原発が復権への道に向かうとの見方には疑問符が付く。

 福島事故後の安全対策強化で、ただでも巨大な建設費は増加の一途をたどり、予定の工期を大幅に超えるケースも相次いでいる。フィンランドのオルキルオト原発3号機は昨年末、臨界に達したが、当初の運転開始予定は09年だった。12年を目指していたフランスのフラマンビル原発3号機の運転開始も、早くても23年になるとされる。脱炭素社会実現のために原発に頼ることのリスクは明白だ。

 再生可能エネルギーのコストが低下し、大規模な洋上風力発電開発などに巨額な投資が流れている現状が、タクソノミーの変更によって大きく変わり、投資リスクの巨大な原子力開発に資金が向くとは考えにくい。

 脱炭素実現のため、他の環境問題が軽んじられる傾向がある点にも注意が必要だ。発電時に二酸化炭素を出さない原発が、電力の脱炭素上、有効な過渡的電源となるのは事実だが、ウランという地下資源に依存し、処分の見通しのない放射性廃棄物を生み出すという点では、持続可能なエネルギー源とは呼べない。

 産業革命以来の平均気温の上昇を1・5度に抑えるためには50年の脱炭素だけではく、30年までの大幅な排出削減も必要になる。これに貢献するのは、再生可能エネや省エネ、熱利用の拡大など、低コストで工期が短い技術の普及だ。

 原発に過剰な期待をかけ、主流である再生可能エネへの資金の流れを変えることは、合理的な投資判断とは言えないだろう。

 これは福島原発の事故で、原子力事故の悲惨さを思い知り、大規模集中型発電の不安定さを身をもって感じた日本にとっても当てはまる。